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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
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魔女の帰還

「此度の一件、娘の命を救ってくださった事だけは心から御礼申し上げる」


教皇親子で遊んでから数日後。

神聖王国を去り、イシュレア王国への帰路へと着く私達に、新教皇となったクラリスの父、ヘイマール教皇が頭を下げる。

その横では、クラリスが淑女の礼を取っている。


助けた直後はかなりやつれてはいたけど、今はかなり顔色も良くなったみたいだ。

これからが本当に大変だろうけど。


ヘイマール教皇は、私達に娘を助けてくれたこと「だけ」は感謝しているという言い方をした。

あれは嘘偽りのない本心だと思う。


まぁ、それはそうだよね。

だって今回、私達はものすごい力業で一国の政権を引っくり返した。

普通、これだけのことをやろうと思えば、事前の国内の根回しなど、準備するべきことは数え切れない。


それに、前教皇親子やその側近は捕えていても、まだまだ神聖王国内には前教皇の息がかかった者はたくさんいる。

その処理だって手付かずだ。


クラリスの処刑まで時間がなかったのもあるけど、その辺のことを全て無視して強引に前教皇一派だけを無理矢理排除したからね。


これら全ての後処理を押し付けられたヘイマール教皇や、クラリスはもちろん。

新政権の旗印となるヒマリもこれから本当に大変だろうね。


ヒマリとは、あの廊下での一件以来会ってない。

何回かヒマリから会って話したいって連絡は来てたけど、全部断った。


他にも捕えてる奴らはいたから、そっちの尋問にも協力していて忙しかったのもあるし、きっと私なんかにはもう会わない方がいいだろうからね。


実際、帰国する私達を見送るために集まってくれている人々の中にヒマリの姿はない。

でも、それでいい。


もう正体を隠す必要もなく、来る時に使ったようなぼろ馬車ではなく、ヘイマール教皇が用意してくれた豪華な馬車での帰国だ。

私が普段使っている馬車よりもずっと上等だし、これならお尻が痛くなることもなさそうで安心だ。


「じゃあ、帰ろうか」


馬車の周りで騎乗している隊員達に声を掛け、出発しようとしたその時。


見送りに来ていた人々を掻き分けるようにして一人の少女が走り出て来た。


「サキさんっ!!」


「ヒマリ……」


「あの、あたし……」


何かを言いかけて、でもそのまま黙り込んでしまったヒマリから目を逸らす。

だって、今さら何を話せばいいのかなんて私にはわからない。


「ジェイク、良いからもう出して」


ヒマリを無視して、御者を務めているジェイクへと指示を出す。


「ですが隊長……本当に良いんすか?」


「良いよ。別にもう話すことなんか……」


出発を渋るジェイクに、私が微かに苛立ちながら再び出発を指示しようとした時、ヒマリの声が聞こえた。


「本当に!本当にありがとうございましたっ!!」


「……」


「あの、あたしこの前は少し驚いてしまって……。

本当にすみませんでした!

でも、やっぱりあたしはサキさんが大好きだし、心から感謝してますっ!!」


私が何も答えず、馬車から顔を出そうとすらしていないのに、それにも構わずヒマリは声を張り上げ続けている。


「今すぐは無理ですけど……。

でも、神聖王国が落ち着いたら、必ず、必ずまた会いに行きますからっ!!

だから、その時は!その時こそは……」


ヒマリの言葉に返事をすることはなく、馬車は走り出す。


ヒマリの最後の言葉に答えるべき言葉を私は持っていなかったから。

第一部、ここで完結となります!


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!


第二部のストックが順調に出来ているので、このまま明日から第二分へと入ります。


引き続き、よろしくお願い致します!

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