教皇と楽しいお遊び
「さて、教皇様?」
人間の口から発せられているとは思えない呻き声をあげているルシウスを放置し、教皇へと向き直る。
ん?下半身が濡れてる……。
漏らしたのか、このじじい。
全く、血の匂いはともかくとして、それは臭いんだから我慢しなさいよね、本当に。
「ねえ、聞いてる?」
相も変わらずガタガタと震えるだけで言葉を発しない教皇。
「あのさ、ヒマリを召喚したのも、政敵を排除したいのもわかるよ?
まぁ、気に入る気に入らないは別だけど」
瘴気とやらの浄化にヒマリと言うか、聖女が必要らしいのは仕方ないし、権利者が政敵を排除しようとするのもよくある話だ。
私がイシュレア王国でやってる仕事も実質そういうことだしね。
「でもさ?
無罪の女の子を、こんな斧を使って処刑するとか、ちょっとないんじゃない?
あんた、これをどうして黙認したの?」
「そ、それは…………」
「早く答えろよ」
「ぐぎゃっ!?」
いつまでも質問に答えない教皇の頭へと振り下ろした斧が、教皇の脳天に突き刺さる。
「もういいや。それあんたの斧?返してあげる」
「……ごふっ……うげぇ……」
頭から斧を生やした教皇が、醜い呻き声をあげる。
んー、耳障り。
「あんた、もう『声出すな』。
あ、むしろ『息をするな』。
静かにしてろ」
再び発せられた私の言葉に、教皇が口から血の混ざった泡を噴きながらのたうち回る。
斧が生えてるのに、よくそんな動けるね?
案外元気じゃないの。
「ねぇ、ルシウス」
「げぼっ」
声をかけながらルシウスの腹を蹴り上げる。
「クラリスとはずっと婚約者だったんでしょ?」
「ぐぎゃっ」
もう一発。
「なのに、よくそんなこと出来たね?」
「ぎゃふっ」
さらにもう一発。
首が取れかかってるのに、よくそんなに声が出るもんだ。
これが人体の神秘?
まぁ、どうでもいいか。
「よし、こいつらはこのまま放置しておいて、そろそろ行こうか」
ひとしきり遊んで少しは満足出来たので、教皇とルシウスはもう放置して隊員達に声をかける。
「あ、何ならみんなも殴るなりしていいよ?」
その言葉を聞いた瞬間、カレンがルシウスの頭を蹴り飛ばす。
そう、非力な私と違い、鍛えられた騎士であるカレンの力で蹴り上げられたルシウスの頭は、文字通り吹き飛んだ。
元々取れかかってたしね。
それでも死ねず、離れ離れになった自分の体を見るのってどんな気分なんだろうね?
是非今度ゆっくりと聞いてみたいもんだ。
久しぶりに、それもかなり腹の立っていた相手で遊んだ私は気分が良かった。
だからきっと、油断していたんだろうな。
今の私が返り血で真っ赤に染まっていることも。
それが周囲からはどう見えるかも忘れてしまうくらいに。




