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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
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決行の日。それは、

「さて、それじゃあ行こうか」


クラリスの処刑が行われるのは丁度正午から。

だから、今日の朝は普段通りに起きて、朝食をしっかりと食べて宿でのんびりと過ごした。

ヒマリはさすがに緊張が隠せない様子であまり食べられてなかったけどね。


私達特別部隊のメンバーはそれなりにがっつりと食べていた。

これはもう、食慾があるとかないとかの問題ではない。

やっぱりしっかり食べておかないと、いざと言う時に力が出ないもん。

みんなそれが身に染みてわかっているから、体が重くならない程度にはしっかり食べるんだ。


私も近衛に成り立ての頃は、実は任務の時は緊張していてあまり食欲はなかったんだけど、半強制的に食べさせられているうちに慣れてしまった。

ヒマリが近衛の一員なら今朝も無理矢理にでも食べさせるんだけど、違うからね。

本音としては詰め込んででもある程度食べさせたいけど自重した。


「はい……!」


私の出発の言葉にヒマリが答える。

うん。良い顔だ。

緊張はしているけど、それが悪い方に向かうことはなさそうな様子。

これなら、きっと大丈夫。


隊員達は言葉では何も言わず無言で頷くだけだけど、普段のおちゃらけた姿とは全く別人のように引き締まった顔をしている。

きっと、その姿はヒマリにも安心感を与えてくれるはずだ。

私としても頼もしく思える。


宿を出たのは、正午まであと30分程に迫った時間。

処刑が行われるのは、街の中心部にある広場で、ここからなら歩いて10分程度の位置だ。


今日も来ている灰色のローブのフードを深く被りつつ、視線だけを動かして街の様子を観察する。

今日は鬘は付けてないからね。

髪色や顔をしっかりとかくしていかないといけない。

他の隊員達が私とヒマリを囲むように歩いてくれているから、これなら相当気を付けて見ない限りはまず大丈夫だと思う。


昨日までは僅かに緊張感がありながらも賑わっていた街は、今日はまるでそれが嘘のように静まり返っている。


私達と同じように広場を目指して歩いてるいる人の姿は結構あるけど、その顔はどれも一様に暗い。

庶民に慕われているクラリスの処刑だもんね。

それも仕方ないか。

まぁ、そうじゃなくても明るい顔をして処刑を見に行く人なんて、私と同類かっていうレベルで危ない人だと思うけど。


今日は全員でまとまって動いてるから、それなりに目立つ集団だとは思うんだけど、誰もこちらに目を向けない。

たまにちらりと視線を向けて来る人はいるけど、すぐに興味を失ったかのように視線を別の方向、処刑が行われる広場の方に戻す。


その視線を追っていけば、見えて来たのは街の中央広場。

そして、そこに作られた処刑台だった。

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