宿での女子会 2
「女子会と言えばやっぱりあれですね!恋バナ!」
未だに戸惑う私達に構うことなく、カレンは一人上機嫌だ。
「ジェイクから聞きましたよ!隊長、こっちに来る前は恋人いたんですね?
あたしはその場にいなくて聞けなかったんで、是非色々と!詳しく!聞かせて欲しいなーって思うんですが!!」
「え、またその話?」
確かにあの日カレンはいなかったけど。
ジェイク、何余計なこと話してんだ。
今回の件が片付いたらお仕置だな。
「そうです!あたしだって聞きたいですもん!
聖女様だって、もっと聞きたいですよね!?」
「へっ!?
えっと……興味がないと言ったら嘘になりますね……」
カレンの勢いに押されるように、ヒマリも頷く。
まぁ、あの時は食い付き凄かったもんね……。
興味があるのは本当なんだろうけど。
さて、どうしたもんか。
「うーん、具体的にどんなこと聞きたいの?」
「そうですねぇ。やっぱりまずはどんな馴れ初めだったのかとかですね!」
「えっとね、大学の学部とサークルが同じ人で……。
あ、学部とサークルって言うのはね……」
なんでこんな話することになったのかはよくわからないままではあるけど、カレンに聞かれるままに答えていく。
ほんの数年前の記憶なのに、まるで遠い昔の出来事みたいだ。
私はもう恋愛なんて出来ないだろうから、きっと私にとって最初で最後の恋になるんだろうな。
「ほほぉー、なるほど!
それで、告白したんですか!?されたんですか!?
そしてそれはどんな場所で!?どんな言葉で!?」
「え、そこまで言わなくちゃ駄目?」
もちろん覚えてはいるけど、それはさすがに少し恥ずかしいと言うかなんて言うか。
ちょっと顔が熱くなってくる。
「あ!隊長照れてますね!?
もー、本当に可愛いんですからー!!」
「ちょっと。だから抱き着くのはやめなさいっていつも言ってるでしょ。
ほら、離れなさいってば」
「…………ぷっ」
例の如く抱き着いて来るカレンを引き剥がそうともがいていると、そんな私達のじゃれ合いを見ていたヒマリが我慢出来ないと言うように吹き出した。
ツボに入ったのか、ずっと肩を小刻みに震わせて笑い続けている。
「ちょっとヒマリ。笑いごとじゃ……」
「聖女様。やっと笑ってくれましたね」
「え?」
カレンの言葉に、ヒマリが驚いたように顔を上げる。
「神聖王国に入ってから、ずっと思い詰めたような顔をなさっていたので気になっちゃって。
やっぱり聖女様は笑顔の方がいいですね!」
「カレンさん……」
「クラリス嬢が心配なのもわかりますし、色々と不安になるのもわかります。
今だって、クラリス嬢が大変なのにこんなのんびりしてて良いのかなって思ってましたよね?」
「それは……はい、そうです……」
先程までとは雰囲気を一変させ、真剣な表情のカレンの言葉を、ヒマリも真剣に聞いている。
「でもね、聖女様。こんなときだからこそなんですよ。
こうやって、のんびり出来る時にしっかりのんびりして、たくさん笑って。
それがあるからこそ、いざって時に踏ん張れるんです。
だから、今は聖女様も笑ってていいんですよ。
ずっと張り詰めたままでいたら、本番までもちませんよ?」
「それは……確かにそうですよね」
「そうです!
だから、聖女様も一緒に隊長の恋バナもっと聞き出しましょう!」
ニカッと笑って見せるカレンに、ヒマリの顔にも絵が浮かぶ。
「……あはっ。そうですね!
わかりました!今夜はとことん聞いちゃいましょう!」
すごいなぁ、カレンは。
あっという間にヒマリを笑顔にしちゃった。
恋愛の話は、ちょっと色々と思うところもあるから、正直もう勘弁して欲しいとは思うんだけど。
でも、それでヒマリが少しでも笑顔になれるなら。
甘んじて受け入れても良いの……かな?
まぁ、たまにはこんな夜があっても良いか。
そう思った。




