魔女と呼ばれる理由
「私の能力は浄化なんて素敵なものじゃないよ。
私は『視界内の相手に限り、言葉にした現象を何でも引き起こせる』んだ」
ついでに言うと、毒も効かないけど。
まぁ、これは今は関係ないから言わなくてもいいか。
そもそも全部の毒が効かないかもわからないし。
盛られたことがあるのって、割と有名どころと言うか、一般的に広く知られてる毒だけだしね。
「え!?そんなこと出来るんですか?」
「うん。それこそ見える範囲にいる相手なら、全員まとめて一瞬で殺せるし、逆に怪我してても治せる」
「サキさんてもう無敵なんじゃ……」
「そんなことないよ」
ヒマリはそう言ってくれてるけど、この能力だってそこまで万能じゃないのは私が誰よりも良く知っている。
身体能力が優れているわけではないから、見えないところから攻撃されたら対処出来ないし、魔法だって使えない。
それこそ、うちの部隊がその気になれば私を殺すことなんか簡単だと思う。
私がそう説明しても、ヒマリは何やら感極まった様子。
「でも、あたしも一応治癒は出来ますけど、そんなに大勢に一瞬でとかはとても無理です。
サキさんの方がよっぽど聖女っぽい……」
その言葉に、なんて答えて良いかわからなくなる。
今までそんな事のために能力を使ったことなんてなかったし。
傷を一瞬で治すのだって、拷問で相手が死なないように。
さらに苦しみを与えるためにしか使ったことがない。
だからこそ、私は”必滅の魔女”なんて呼ばれてるわけだし。
能力のことを聞いて、真っ先に誰かを癒すことを考えたヒマリと、そのことは全く考えずに誰かを傷付けるためだけに能力を使って来た私。
その違いこそが、まさに”聖女”と”魔女”と対照的な呼ばれ方をしている私達の在り方そのものを表しているみたいだ。
それがわかるからこそ、私はヒマリの言葉に首を振る。
「私は聖女なんて呼ばれるような資格はないよ。
そんな良いことに能力を使ったことなんて一度もないから。
逆のことには散々使ってるけどね。
だから私は魔女って呼ばれてるわけ」
「……」
いつも通りの無表情で淡々と事実を告げる私を、ヒマリは何故かとても悲しそうに見ている。
なんでヒマリがそんな顔するんだろう。
その表情から伝わるヒマリの感情が、私が心の奥底に仕舞い込んでいる何かに優しく触れてくるような気がして。
でも、それを受け入れてしまうと今の私という存在が失われてしまうような気がしてしまい、だから私はその話題から逃げる。
「とりあえず、私の能力のことはわかったでしょ?
これから具体的にどう動くかは、明日他の隊員とも合流してから決めるし、今日はもう解散にしようか。
ヒマリも早く寝なさい。わかった?」
「はい……」
半ば無理矢理その場をお開きにすると、私も不寝番の確認を済ませ、私も早々に体を休めた。




