表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
44/401

魔女の歩んだ道

「どうかしました?

出来ればその辺を是非詳しく!」


私は日本での生活で毎日何を感じていた?

楽しかったことも悲しかったことも、色んなことがあったはずなのに、それがわからない。

今覚えてることが、本当に自分の記憶なのかとすら思えてくる。


「んー……。

まぁ良いじゃないの、その辺は。

とりあえず、ヒマリと同じ。どこにでもいそうな普通の女子大生だったよ」


「うぅ……めっちゃ気になる。

でも、そうですよね。彼氏さんとの思い出はサキさんにとって大切なものでしょうし、軽々しく聞いて良いものじゃなかったですね。

ごめんなさい」


どう返せばいいかわかなかった私の返事を、どうやらヒマリは私にとって都合のいいように解釈してくれたみたい。


ヒマリが引き下がったことで、他のみんなもこれ以上このことを聞いてくることはないよね。

お年頃コンビはまだ気になるみたいだけど。


「全然いいよ、気にしないで。

それで、ある日突然こっちに来た訳なんだけど……この先本当に聞く?」


改めて確認する私に、ヒマリは先程までの楽しそな表情を消し、真剣な顔で頷く。


「そう……。じゃあ、話そうか。

あぁ、二人は出ててもいいよ?」


私が声を掛けたのは、レイシアとソフィアだ。

二人の家の事件のことを直接話すつもりはないけど、これまでどんな任務をして来たかを話せば二人が自分の家や家族のことを思い出してしまうのは避けられないと思う。

それはキツいんじゃないかと思ってのことなんだけど。


「いえ、わたくしにも是非聞かせてください」


「私も聞きたいです」


真っ先に答えたレイシアにソフィアも続く。

何を思って二人がそう言ったのかは私にはわからないけど、聞きたいと言うのなら止める理由もないか。


「わかった。そうだな……まずは最初に森の中にいた頃のことから話そうか」


山賊紛いのことをして過ごした森の中での生活。

とにかく生きることに必死で、そのためなら何でもやった。

この国に引き取られてからは、それが任務という形に変わったけど。


森の中で盗賊達を襲うのも、罪を犯した貴族を暗殺したり拷問したりするのも、結局のところやっていることは同じだ。


必要なら殺すし、知りたいことがあれば拷問をしてだって聞き出す。それだけのこと。


そして私は、それらを自分の意思で、自分のために。

楽しんでやっていた。


「まぁ、私はこんな奴なんだよ。怖くなった?」


私の話を聞いているうちに、ヒマリは顔を真っ青にして俯いてしまった。

家族の拷問を私が楽しんでいたと聞いたレイシア達は表情こそ変わってないけど、どう思っているかはわからない。


「私はね、壊れた化け物なんだ」


自虐でもなんでもなく、真実そう思っている。

命を奪ったのも拷問したのも、全部私がしたことだし、それに対する後悔なんて全くない。


私は化け物だし、怖がられて避けられるのが当たり前だもんね。


それでも……うん。

この子達にもそう思われるのは、ちょっと。


本当にちょっとだけ。


悲しいかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ