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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
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どうしたもんかね?

「話せと言われてもねぇ……」


王城で聖女と会った翌日。

今日は出勤する予定もなく、私は自分の屋敷でぼーっとして過ごしていた。

そうなるとつい考え事をしてしまうんだけど、どうしても昨日王妃様に言われたことを考えてしまう。


「お嬢様、お茶はいかがですか?」


「あ、うん。ありがとう」


アーシャが淹れてくれたお茶を飲んでほっとひと息。

ついでに、昨日王妃様からもらったお菓子も出してくれてあるから、それをもぐもぐ。

どっちもすごく美味しい。

美味しいんだけど。


「はぁ……」


どうしても溜め息を吐いてしまう。

おかしいなぁ。

この世界に来てから、こんなに他人のことで悩んだりなんてしたことなかったのに。


任務に聖女は連れていけない。

せっかく出会えた日本人に危険な目に遭って欲しくないし、何より来られても邪魔でしかない。

隠密性の高い任務は、私だってみんなの邪魔をしないようにするのに必死だしね。


それでもどうしても着いてくると駄々をこねるようなら、無理矢理動けないようにして置いていけばいい。

それだけのことなのに。

なんでこんなにモヤモヤするんだろう。


「お嬢様、次の任務は難しいものになるのですか?」


「え?うん、まぁそうかな」


アーシャが任務のことについて聞いてくるなんて珍しい。

と言うか、もしかしたら初めてかもしれない。


私の任務は、基本的に内容的にも関係者以外には話せるものではないし。

アーシャはその辺のことはわかっているから、これまで何も聞いてくることはなかった。


それでもこうして聞いてくるっていうことは、相当心配させてるんだろうな。

確かに、これまでどんな任務前でもこうして悩むことなんてなかったし。


室内に目を向けてみると、最近専属侍女その二になったばかりの元エンメル伯爵令嬢のソフィアも心配そうに私を見ている。


ちなみに、以前までソフィアが務めていたお客さんの対応役は元アーセル公爵令嬢のレイシアがしている。

なんだかんだ言っても、元公爵令嬢。物腰もお客さん対応もさすがの一言のレベルなんだよね。


って、今はそれはどうでもいいか。


「ごめんね心配かけて。

ちょっと気にかかることがあってモヤモヤしててさ」


「お嬢様、それでしたら庭園のお散歩などされてみてはいかがでしょう?

今日はお天気も良いですし、良い気分転換になるのではないかと」


「散歩かぁ……」


結構な広さのあるこの屋敷には、当然ながらそれなりの規模の庭園もある。

そう言えば、庭師のトム爺さんが薔薇によく似た何とかって花が見頃とか言ってたような?


日本とは微妙に植生が違うから、知らない花ばっかりだけど綺麗なものは綺麗だしね。


「うん、そうしようかな。

二人も一緒に行こ」


そうして、アーシャとソフィアを引き連れて庭園に向けて屋敷を歩いていると、前方からセバスチャンが早足で近付いて来るのが見えた。


「お嬢様」


「ん?どしたのセバスチャン」


「お客様がお見えでございます」


「あれ?誰かと約束あったっけ?」


この世界においては、誰かの屋敷を訪ねる時は事前に先触れを出してお伺いをするのがマナーとされている。

まぁ、日本でもそうか。普通いきなり人の家に行かないよね。

だから、私が約束していたのを忘れてるのかなと思ってアーシャに聞いたんだけど、アーシャは無言で首を振っている。

本年はお世話になりました!


来年も頑張って投稿していきますので、よろしくお願いいたします!


皆様、良いお年を!

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