表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
4/401

『流れ人』

今なら少しわかる。


国王様も王妃様も優しくて立派な人だと思うけど、この国はまだ大きな戦が終わったばかり。


立派な為政者がいても、その恩恵が下々まで届くにはまだ時間がかかり、国民の大多数は余裕がない暮らしをしている。


戦で住む村や街を失って盗賊に身を落とした者も大勢いる。

他人を騙してでも生活の糧を得ないと、明日食べる物すらない人だって大勢いる。


私を襲った盗賊達や、騙そうとして来た村人達もきっとそうなんだろう。


でもね?

だけどね?


それがどうしたって言うの?


そんなのは私が搾取される理由にはならない。


私から奪おうと言うのなら、私が先に奪ってやる。


私を殺そうと言うのなら、私が先に殺してやる。


もう逃げない。

何度も襲われ、騙されかけた末にそう決めた時。

きっと私の心は死んだ。


襲われる前に逆に盗賊を襲っては食料や生活に必要なものを奪った。

さすがに人里を襲うことはしなかったけど、それも良心からじゃない。

それが原因で追っ手が付いたらめんどくさいからだ。


そうして盗賊だか山賊だかのような暮らしをして一年が過ぎた頃。

あのインテリイケメンが現れた。


その日も、私は盗賊達の隠れ家を見つけては盗賊を皆殺しにし、処理がめんどくさいから死体はそのままに中を物色していた。


「黒髪の少女を見掛けたという情報は本当だったのか……」


私を見て驚いたように呟くそいつの後ろには、たくさんの兵士の姿も見えた。


「動くな」


私を捕まえに来たのか。

そう判断した私は、兵士達の動きを止めると、すぐにその場を離れようとした。


「ま、待ってくれ!」


そんな私に、慌てたように声を掛けて来たインテリイケメン。


「……なに?」


「君は『流れ人』だろう?我々は君を保護しに来たんだ」


「流れ人?」


その時の私は、相当荒んだ目をしていたと思う。

まぁ、今もかもだけど。

それにずっと森や山で過ごしていたから汚れていたし、盗賊の返り血だって浴びていて酷い有り様だったはずだ。


それでも、そんなことは気にした様子もなく、インテリイケメンは『流れ人』とは何かを教えてくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ