旅立ちに向けて
フローリアを宥めるふりをしながら待つこと暫し。
ピュレスさんに連れられ、警護隊のみんなが執務室へと集まった。
「みんなお疲れ様!
えーっと、ここからはサキに任せていいのかな?」
「うん、あ、ピュレスさんとソフィアもそのままでね」
フローリアの言葉に頷いてみんなへと向き直ると、遠慮して部屋を出ようとするピュレスさんとソフィアを引き留める。
確かにここまでの動きの打ち合わせは二人はあまり加わってはいなかったけど、私達が帝国へと行った後の話もあるからね。
領地を任せるピュレスさんとソフィアにも居てもらう必要がある。
「かしこまりました」
「では、私は皆様にお茶の用意をしますね」
「うん、助かる。ありがとう」
みんなが席に着き、ソフィアがお茶の用意をしてくれるのをしばらく待つ。
この人数だと執務室のソファだけじゃさすがに手狭だけど我慢してもらう。
警護隊の面々はガタイも良いから仕方ないよね。
「さて、それじゃあ始めますか」
お茶を一口飲み、集まった一人一人に視線を向ける。
ピュレスさんやソフィアは緊張感を隠せてないけど、警護隊のみんなはいつも通りだ。
一部カレンとかジェイクとかが楽しみで仕方ないというふうに目を輝かせてるけど。
「伝えてもらった通り、マークから手紙が届いた。
まぁ、書面での連絡としては最終になるのかな。
それによるとね、向こうでの受け入れ準備が整ったってさ」
私の言葉への反応は、各自それぞれ。
表情を引き締める人がいれば、たまらずと言ったように笑顔になる人もいる。
誰がどの反応かはご想像にお任せってことで。
「では、いよいよですか」
「うん、そうなるね。
で、幾つか確認したいんだけど……」
ヒギンスの言葉に頷きながらピュレスさんに視線を向ける。
「ピュレスさん」
「はい」
「私とフローリアが抜けて、領政は大丈夫そう?」
その言葉に一瞬考える素振りを見せるも、すぐに頷いてくれる。
さりげなくモノクロの位置も直すのが様になってる。
「まだいくつか当主印による決済が必要なものがありますが、それさえ済めば大丈夫かと。
最優先で進めますので、二日あれば。
残りは私とソフィア殿で対応可能です」
ピュレスさんのその言葉に、ソフィアも頷いている。
「じゃあ、それで進めてもらえる?
フローリアも良い?」
「もちろん!」
フローリアが元気よく頷くのを確認すると、今度はヒギンスへと視線を向ける。
「警護隊のみんなは準備問題ないだろうけど、騎士団のほうはどうかな?」
「問題ありません。
練度も、まぁまだ合格とまでは言えませんが最低限にはなったかと。
不在時の指揮系統についても打ち合わせ済みです」
「了解」
ヒギンスがそう言うなら、たぶん練度的には既にそこらの並の騎士団と同等かそれ以上くらいにはなってるはず。
合格基準がめっちゃ高いからね。
合格が出る時には、ノフロン騎士団とも良い勝負出来るレベルになってるんじゃないかと思うもん。
「では」
改めて集まってくれたみんなの顔を見渡して口を開く。
「出発は三日後で。
それぞれ最終確認をよろしくね」




