先輩達との交流
もちろん、令嬢や令息と仲良くなったからすぐにその家とも関係が築けるわけではない。
あくまでも彼らはまだ爵位を継いではいない子どもに過ぎないから。
だけど、親しくなれば当然その家の実権を持っているだろう両親にも話が行く。
そこから家同士で付き合いが始まればそれに越したことはないし、そうはならなくても彼らが爵位を継ぐだろう時期になれば付き合いやすくなるしね。
家に残らずに嫁いでいく子達もいるけど、そうなればその嫁ぎ先の婚家との縁が出来る可能性だってある。
だから、令嬢達との付き合いも馬鹿に出来ないんだよね。
本来はそう言った繋がりを作るのが幼少期から参加するお茶会であったり学園であったりするんだけどね。
フローリアの場合は仕方ないこととは言えその過程は全部飛んでるから。
だからこそ、普通の夜会に比べて令嬢や令息の参加人数が多い今日みたいな機会は貴重なんだ。
「サキー?リズベットもどうしたの?」
そんなことをリズベットと話してると、フローリアが小首を傾げながらこちらを見ている。
「いや、なんでもないよ」
まぁ、あれだな。
フローリアは相手の懐に入り込むのが上手いと言うか、すぐに仲良くなれるから。
あんまりあれこれ言って変に考えさせないで、好きにやらせておくのが良いのかもしれない。
もしかしたら、天然の人たらしなのかもね。
私の場合はまず怖がられることから始まるのが多いから羨ましい限りだ。
「そう?それならいいけど。
じゃあ、サキもこっちに来て皆さんとお話しよう」
「はいはい」
一応世代的には私が彼らと同世代になるからね。
ここで良い関係を築いておくのは私の仕事か。
フローリアだと本来は世代としては少し上になるし。
まぁ、日本人は幼く見えるみたいだから一緒にいるのを見ると同世代にしか見えないけど。
「お二人は普段は領地におられるのよね?
王都にはいつまでいらっしゃるご予定ですの?」
そう尋ねて来たのはノッペン侯爵令嬢のサリアナ嬢。
確か王都南部に領地があったはずだ。
特産品は……あ、なるほどね。
「そうですね……。まだまだ領地でやることもあるので、あまり長くは居られないかなーと」
「まぁ、そうなのですか……。
出来たらお茶会にご招待したかったのですが……」
フローリアの答えに残念そうに眉を下げているサリアナ嬢。
確かにね、本当ならフローリアの言う通りなるべく早く領地へと帰りたかったところなんだけど……。
「ねぇ、フローリア。
少し王都に滞在する期間延ばそう」
「え?どうしたのいきなり?」
突然の私の申し出に驚いているフローリアと、嬉しそうにしているサリアナ嬢。
「まぁ、サキ様!本当ですか?」
「私としてはそうしたいなって思うんですけど。
もちろん、フローリアが良ければにはなりますが」
なんだったら、私かフローリアのどちらかが王都に残るだけでも良いと思っている。
それで、王都に残った方がサリアナ嬢のお茶会に参加して良い関係を築いておきたい。
と言うのにも、もちろん理由がある。
ノッペン侯爵領って、織物業が盛んで色んな種類の布があるんだよね。
品質も一流で、国内でもかなり出回っている。
服飾に力を入れていこうってしてるセクメト伯爵家としては是非お近づきになりたい家だ。
サリアナ嬢がお茶会に呼ぼうとしてくれたのも、その辺が関係してると思うんだよね。
セクメト伯爵領にダリアがいるのは当然把握してるだろうし。
王都で人気だって彼女の刺繍は、もうセクメト伯爵家を通してじゃないと手に入らないからね。
「サキがそうしたいなら、私は構わないよ」
「それでは、後日招待状を送らせて頂きますわ!」
王都でやることが一つ増えたけど、領地の今後を考えるとありがたい機会だからね。問題はない。
まぁ、だけどこの会話は当然一緒にいる令嬢達や周りにいる貴族達にも聞こえているわけで。
ノッペン侯爵家からの招待を受ける以上、他の家のもどこかしら参加する必要があるけど。
フローリアはそこには気が付いてないみたいだから黙っておくかな。




