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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第五部 必滅の魔女
364/401

過去の事件

「サキ様」


フローリア達とのティータイムも終え、久しぶりの王都屋敷内をうろうろと歩いていると、後ろから声が掛けられた。


「ん?ソフィア?どうかした?」


誰かと思って見てみれば、そこにいたのはソフィア。

補佐官になってからはフローリアのそばに居ることが多かったのに、私に声を掛けてくるってことは……。


「フローリアがまた何かやらかした?」


基本的にそういう時だからね。

大抵はフローリアが唐突に変なことを言い出して対処に困ったソフィアが私を呼びに来るってパターン。


だから今回もそうかと思ったんだけど。


「いえ、今回はフローリア様は何も。

私が少しサキ様にお尋ねしたいことがありまして」


「私に?」


フローリア絡みじゃないならなんだろう。

騎士団関係かな?


「まぁ、そういうことなら部屋に行こうか。

立ち話ってのもなんだしね」


頷くソフィアを連れて自室へと向かう。

しばらくぶりの部屋だけど、やっぱりここが一番落ち着くんだよね。

セクメト伯爵領の屋敷の部屋に不満がある訳じゃないけど。

たぶん過ごした時間の差だとは思う。


「それで?わざわざ声をかけてくるなんてどうしたの?」


部屋へと着くと、ソフィアがさすが元侍女という慣れた手付きでお茶の用意をしてくたのでありがたく受け取りながら話を切り出す。


「はい。先程のことなのですが……」


「ん?」


さっきのお茶の時間のこと?

何か気になるような話したかな。


「話の途中から、サキ様の魔力が乱れていたと言いますか……。

かなり攻撃的な気配になっていたので何かあったのではと気にかかりまして」


「あー、魔力に出てたかぁ」


顔には出してなかったつもりなんだけど、そっちに出てたのは予想外だったなぁ。

言われてみれば、両親のことを思い出していた時に少し魔力が暴れかけてた気がする。

魔力のないフローリアは気付かなったけど、それなりに魔法を使えるソフィアは気付いたってことか。


「あ、もしかしてレイシアも気付いてるかな?」


ソフィアが気付いたのなら、きっとそうだよね?

そう思って確認してみると、頷かれてしまった。


「間違いなく気付いていると思います。

魔法の扱いに関しては私よりもレイシアの方が長けていますから」


「だよねぇ」


これはどうしようかなぁ。

誤魔化しても良いんだけど、フローリアのそば近くにずっといることになるソフィアには知っておいてもらう方が良いような気もする。

包丁が持てなかったことみたいに、今後も何かしらあの事件の影響がフローリアに出るかもしれないし。


その時に私が近くに居られるとは限らないし、理由を知っていればソフィア達も対処しやすいかもしれない。


それなら……話すか。


「じゃあ、ちょっとレイシアも呼んで来てもらえる?

二人に話しておきたいことがあるんだ」


「かしこまりました」


ソフィアを見送り待つことしばし。

部屋へと来たレイシアは、自分でお茶を用意すると当然のような顔をしてソファへと腰を下ろす。

いや、普段はきちんとしてるから別にいいけどさ。


「先程の魔力の件ですわね?

暴走するのではないかと、内心冷や冷やいたしましてよ?」


「あー、そんなにやばそうだった?」


「ええ、それはもう」


私の言葉に即頷く二人。

どうやら、本当に危なかったっぽい。

その辺の制御も練習しないとなぁ。

まぁいい。それは後回しだ。


「ちょっと昔のことを思い出してね。

それで気持ちが荒ぶってたんだよね」


「昔と言いますと、特別部隊の頃でしょうか?」


まぁ、そう思うのも無理はない。

私が荒ぶるって聞いたら、この世界の人はそう思うだろうしね。


「いや、もっと昔。まだ子どもの頃のことだよ」


「と言いますと、まだサキ様達がニホン国におられた頃ですか」


「うん、そう。

それでね?今から話すことは絶対にフローリアには言わないで。

もしも口を滑らせたら、いくら二人でも命の保障はしない。

それでも良いなら話すけど、聞く?」


「お約束いたします」


「ええ、誰にも言わないと誓いますわ」


僅かに殺気を込めながら二人をじっと見れば、少し顔色が悪いながらも真剣な顔で頷いてくれる。


「うん、ありがとう」


このことを誰かに話すのは初めてだな。

そう思いながら、ゆっくりと口を開く。




「フローリアの……、いや、私達の両親はね。

殺されたんだ」

年内の更新はここまでになります。


次回更新は1月6日の予定です!

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