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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第五部 必滅の魔女
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久しぶりの謁見

「フローリア、いやセクメト伯爵。それにサキ。

久しぶりだな」


執務室へと入り、一応の礼儀ってことで二人並んで頭を下げていると陛下から声が掛かる。

「楽にしてくれ」と言われて頭を上げて挨拶をする。


「お久しぶりです、陛下。

フローリアで構いませんよ」


「どうも、お久しぶりです」


「そうか?それなら公の場ではそうはいかないが、ここでは遠慮なくフローリアと呼ぶぞ。

サキも相変わらず元気そうだな」


「まぁ、元気ですね」


何が相変わらずなのかはよくわからないけども。

とりあえず元気なのは間違いないからね。

そういや、この体って風邪引いたりするのかな?

せっかく王都まで来たし、ナターニャ先生に顔見せがてら聞いてみるかな。


「どうだ、セクメト伯爵領は。何か困ったりしてることはないか?」


「今のところは恙無く。

まだ細かい部分では色々と足りてない部分はありますが、少しずつ対処していこうと思っています」


「ああ、それがいい。

焦って何もかも一気にやろうとすると、かえって上手くいかなくなるものだからな」


その言葉には妙に実感がこもっていた感じがするけど、もしかして陛下の実体験を元にしてるのかな?

なんだかんだで苦労してる人だし。



「さて、それで今日の本題だが……」


しばらくお互いの近況報告などをしたところで、陛下が表情を切り替える。

さっきまでの親しみやすいおじさんの顔ではなく、為政者の顔になった陛下を前に私が口を開く。


「最近の帝国の様子については報告が来てますよね?」


「あぁ、話は聞いている」


まぁ当然だよね。

マークが私にだけ報告して陛下に何も伝えていないはずがない。

私達へしたのと同等の報告が陛下の元にも届いている。


「もういい加減、帝国に煩わされるの鬱陶しいと思いません?」


「確かにな……」


帝国のせいでこれまで散々苦労して来た陛下だ。

私の言葉に苦々しさを浮かべて頷く姿からは、過去の帝国との色々なことを思い出してるのが窺える。

直近でもハーパーを始めとする令息達への接触やエフィーリア様への婚約話とかね。


「だから、帝国の強硬派。潰そうかなって」


「……随分と気楽に言うものだ」


陛下は苦笑いを浮かべてるけど、わかってるはずだ。

今はちょこちょこと嫌がらせのように仕掛けて来てるだけの帝国だけど、このまま強硬派である皇太子が帝位に就けばどうなるかって。


ヒマリの結界もあるからすぐに戦争とかは無いかもしれないけどね。

だから大丈夫だろうと放置するには危険すぎる。


「穏健派と結ぶつもりか?」


「そうですねぇ。

とりあえず、強硬派を潰すって一点に関してだけは協力出来るかなって。

その後のことはまだなんとも」


「確かにそうだろうな」


出来ればそのまま何かしらの条約とかを国同士で正式に結んで良い関係を作れればとは思うけど。

穏健派を率いている第二皇子がどんな人かもよくわらかないしね。


「わかってるとは思うが、国として表立っては動けんぞ?」


「それはもちろん」


これに関して国として表立って動くって、それつまり帝国との開戦だもんね。そりゃ動けないよ。

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