めでたい知らせ
「わたくしは別に結婚したい訳では……」
「まぁ、アンネ様にコーネリア様。
本日はわたくし共のためにありがとうございます」
まだぶつぶつ言ってるカリナを無視して、ミリアがアンネ達へと向き直る。
「いえいえ!お友達になったのですから!」
「お見送りに来るのは当然ですわ!」
それに答えるアンネとコーネリアは、今日も息ぴったりだ。
「ところで、先程カリナ『も』と仰っていましたが?」
そう言えばそんな言い方をしてた。
つまり、二人の身近に他にも結婚をする誰かがいるってことなんだろうけど。
「あ、つい口走ってしまいましたわ」
「正式な発表はもう少し先になるのですが……」
少し恥ずかしいそうにモジモジとしてる二人だけど、その顔には話したくて堪らないと書いてある。
「実は、わたくしと」
「それにわたくしも」
そこで言葉を切ると、二人は嬉しそうに手を繋ぎ微笑み合う。
お?これはもしかして?
「「婚約が決まったのですわ!」」
「まぁ!そうなのですね!おめでとうございます!」
「わぁ!おめでとう二人とも!」
「おめでとうございます!!」
手を繋いだまま幸せそうな笑顔で二人が告げた言葉に、エントランスは一気に騒がしくなる。
「おめでとうアンネ、コーネリア。
ちなみに、お相手のことは聞いても大丈夫?」
正式発表前だから、もしかしたらまだ言えないとかはあるかもしれないけど。
そう思いつつの質問に、二人は笑顔のまま頷く。
「わたくしのお相手はルーベック侯爵令息。
つまり、コーネリアのお兄様ですわ!」
「そして、わたくしのお相手はフューリー侯爵令息。
アンネの弟君でございます」
「え、それってつまり?」
「将来はわたくしがルーベック侯爵夫人に!」
「そして、わたくしがフューリー侯爵夫人になるのですわ!」
「じゃあ、二人は姉妹になるんだね!」
「はい!フローリア様とサキ様のように、姉妹になるのです!」
へぇ、それはまた。
二人は今も姉妹みたいに仲がいいけど、本当に姉妹になるんだ。
それに、フューリー家とルーベック家は共にイシュレア王国の軍事の中枢を担う家門だし、そこが婚姻で繋がるのは国にとってもプラスになる。
まぁ、元々両家の関係は良好だったし、お互いが幼なじみなのは聞いてるからそう言った政略的な側面はほぼないだろうけどね。
何より、二人がこの婚約を心から喜んでいるのは今の幸せそうな顔を見れば一目瞭然だ。
「フローリア、セクメト伯爵家としても正式に何かお祝いをしないとね」
「あ!そうだね!二人は何か欲しいものとかない?」
まぁ、今のセクメト伯爵家の資産は、私が元々持ってた財産だけだからそれ程のものは贈れないとは思うけど。
こういうのは気持ちの問題だから。いいんだよそれで。
「わたくし達としましては……」
「お二人が式に来てくださればそれだけで充分ですわ」
「それはもちろん!サキと一緒に絶対に行くよ!
ね、サキ?」
「うん、必ず行くよ」
そう答える私達に、満面の笑みを見せてくれるアンネとコーネリア。
二人の式は、どんなに早くても学園の卒業後になるだろうから、それなら私達もその前に……。
「それでは皆様。大変名残惜しいのですが……」
そう今後の計画を立てていると、ミリアがみんなへと改めて声を掛ける。
あぁ、そうだよね。
いつまでもこうしてはいられないか。




