お披露目が終わって
「今回のお披露目はほんっっっとうに!すごかったですわ!!」
あのお披露目の日から数日が過ぎた週末。
私は、お屋敷の庭に親しい友人達を招いてお茶会をしていた。
「その通りですわ!
わたくし、本当に感動してしまって……。
今思い出しても泣けてしまいます……」
未だに興奮冷めやらぬ様子のアンネの言葉に同意するコーネリアが涙を拭う仕草を見せる。
「確かに二人の言う通りだな。
私もいずれはあのような誓いを立てたいものだ」
「間違いなく、王国の歴史に残るお披露目の儀となりましたわね」
いつもなら大はしゃぎするアンネとコーネリアを窘める役回りのナタリーとリズベットまでもがそれに同意している。
「そこまで言われると少し恥ずかしいんだけどさ。
みんなが来てくれてたから、それならあの場でやる方が良いかなって思ったんだよね。
やっぱりみんなにも見届けて欲しかったと言うか」
サキも恥ずかしそうにこそしているものの、その表情を見る限り満更でもなさそう。
確かに、私としてもみんなにも見届けてもらえて良かったと思ってる。
「でも、まさかあそこでみんなが証人として名乗りをあげてくれるとは思わなかったよ」
「わたくしもそこまで頭が回ってはいなかったのですが、エフィーリア様が名乗りをあげてくださいましたから!
これは続くしかないと思ったのですわ!」
アンネの言葉に、他のみんなも頷いている。
そのエフィーリア様は残念ながら今日は公務で来られてないんだけどね。
「本当にありがとうね。
でも、ミリアとカリナは良かったの?
フォーリア王国の代表って言っちゃってたけど」
そう話を振ってみれば、当のミリアとカリナはなんでもなさそうに微笑む。
ヒマリちゃんも似たようなことは言ってたけど、何となくあの子の方は問題ない気がする。だってヒマリちゃんだし。
「全く問題ありませんわ。
むしろ、あの場にいて名乗りをあげない方が祖国へ帰ってから何を言われるかわかったものではありません」
「あぁ、お姉様方はもう少しで帰られてしまうのですね……」
ミリアの口から出た祖国へ帰ってからという言葉に、エミリーちゃんが反応する。
そうなんだよね。
ずっとうちのお屋敷に滞在してくれてるミリアとカリナだけど、いつまでも居られるわけじゃない。
私がセクメト領へ引っ越すタイミングで帰国することになってるんだ。
「確かに帰国はしますが、祖国へと帰ってからも皆様とは交流を続けたいと思っておりますわ。
ですからエミリーさん。必ずまた会えますから」
「はい!私、お手紙書きます!」
ミリアの言葉にエミリーちゃんが元気良く頷く。
今日はお茶会とは言っても身内だけを呼んでる気楽なものだからね。
だから、本来なら参加出来ない平民のエミリーちゃんも来てるんだ。
「二人には改めて感謝しないと。
これも二人が尽力してくれたお陰だから。
もちろん、ニーナちゃんもね」
「いえ、私は頼まれたことを精一杯務めあげただけですので!」
サキの言葉に嬉しそうに答えるニーナちゃんも、もちろん来てるよ。
「そう言えば、ニーナちゃんは今回のことで早くも魔術士団からスカウトが来てるって聞きました!」
「まぁ、そうなのですか?」
「おめでとうございます!」
どこから仕入れたかのかわからないけど、おめでたいことは間違いないヒマリちゃんからの情報にみんなが盛り上がる。
本来なら卒業後に仕事に就く学園生は三年生になってから就職活動を始めるらしいからね。
まだ二年生になりたてのこの時期にスカウトされるのはかなり異例のことだと思う。
それだけ今回の功績が評価されてるってことだよね。
その後もワイワイと楽しく過ごし、やがて良い時間になったので学園の寮へと帰るみんなを見送っている時だった。
サキが静かに口を開く。
「フローリア」
「ん?」
「話したいことがあるんだ」
それだけで何となくだけどわかった。
以前からサキは何か動いていたみたいだけど、それが何かはいずれ時が来たら話すとだけしか言わなかった。
そして、これからそれについて話そうとしてくれてるんだって。
「わかった。部屋に行くよね?」
「うん」
いつになく真剣なその表情に、つい不安になりかける。
だけど、サキがせっかく話そうとしてくれてるんだから。
それをきちんと受け止めるのが私の役目だ。




