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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第四部 「サキ」と「咲」
333/401

もやもやする

そうして、疑問を抱えていても時間が来たらもう行くしかない。

まぁ、エフィーリア様のことだから悪いことではないだろうし、この様子ならサキに何かあった訳でもなさそうだからね。

気にならないと言ったら嘘になるけど。


「あ!フローリア!そなたもきたのか!」


エフィーリア様にエスコートされながら王族の待機場所へと行くと、まだ幼さを多分に残した声が響く。


「王太子殿下!お久しぶりです」


その声の主は御歳八歳の王太子殿下。

つまり、陛下と王妃殿下の息子さんね。


「フローリア、わたくしもいるのよ!」


「王女殿下もお久しぶりです」


その王太子殿下の後ろからひょっこりと顔を出したのは、六歳になられた第一王女殿下。

よく見ると、王太子殿下と仲良く手を繋いでいる。

あー、王女殿下のエスコートは王太子殿下がなさってるのね。

しっかしお二人とも本当に可愛いなぁ。

いつお姿を見てもほっこりしちゃうよ。


「ほら、二人とも?きちんとご挨拶をなさい」


元気いっぱいなお二人をやんわりと注意している王妃殿下は、なんて言うかいつもと少し違ってお母さんの顔だね。

王妃殿下っていつ見てもめっちゃ若々しいんだけど、実は二児の母なんだよ。


「そうか、二人はフローリアとはしばらく会っていなかったか」


王太子殿下と王女殿下に挨拶をしていると、そんな私達を見ていた陛下が思い出したように呟く。

私が王妃殿下とお茶会をさせて頂く時にたまにご一緒してたんだけど、最近はなかなかタイミング合わなかったのよね。


それにしても、今日はこの国の王族がほぼ勢揃いだなぁ。

さすがに高齢の王太后様は来られないようだけど。


「お、フローリア」


改めてお披露目の規模の大きさに戦々恐々としていると、後ろから名前を呼ばれる。


「サキ!やっと会えた……って、なんでその格好なの!?」


ようやく聞けた探し人の声にほっとしながら振り向いた私は、そのままの姿勢で驚きに目を見開くことになった。


「ん?どっかおかしい?」


当の本人はそんな私の様子に首を傾げると、王太子殿下と王女殿下に「私の格好どっか変?」と聞いている。


「いや、サキ!すごくかっこいいぞ!」


「うるわしのきしさま!ですわ!」


そして、そんなサキを絶賛している両殿下。

いや、わかるよ?確かに私もそう思うけどさぁ!

違うんだよ!そこじゃないの!


「なんでドレスじゃなくて近衛騎士団の正装なの!?」


そうなんだよ!

てっきりサキもドレス姿で来るとばかり思ってたのに、懐かしの近衛の正装姿なのよ!

純白の近衛服はよく似合ってるし素敵なのはその通りなんだけど!

珍しく帯剣までしてるし!

ちなみに、近衛の中でも特別に許可を得た人だけがこういう時でも帯剣出来るらしいよ!


「あ、そこ?

えっとね、私今日から正式に近衛に復帰したんだ」


「…………え?」


予想外のサキの言葉に、なんだかんだで昂っていた気持ちがすっと冷めるのを感じた。

確かに制服着てたり帯剣してるってことはそうなんだろうけど。


「どういうこと?

私何も聞いてないよ?」


驚いてつい責めるような口調になってしまった私に、サキが申し訳なさそうに眉を下げる。


「えっと……うん。そこはごめん」


そんな顔はさせたくないと思うのに、思った以上にショックが大きく言葉が止められない。


「それに、私はセクメト領に行くのに近衛に復帰って……。

もしかして、一緒には来てくれないの?」


学園に復学して、そうしたら寮生活になるからそれでしばらく離れることになるのは仕方ないと思ってた。

だけど、サキは少なくとも今は復学しないと言っていた。

だから、一緒にセクメト領へ来てくれるとばかり思ってたのに違うの?


それに、元々の部下でもある警護隊のみんなのことはどうするつもりなんだろう?

みんなは私が護衛対象だから一緒にセクメト領まで来てくれることになってるから、サキは彼らとも離れるつもりなの?


まさかとは思うけど、消えることは止めたけど、みんなとは離れるつもりでいるの?

ホムンクルスの体へと移る前にあれだけ自分は消えると言い続けていたサキだから、ついそんなことを考えてしまう。

私とは絶対離れないって言ってくれてたのに。


「いや、そうじゃないよフローリア。

私は……」


「話しているところ悪いが、もう時間だ。出番だぞ」


サキが何か言いかけていたけど、それを遮るように陛下の声が響く。


「あ、すみません……。わかりました」


どうしよう。大切なお披露目の前なのに、私のせいで微妙な空気にしてしまった。

王族の皆様も心配そうにこっちを見てるし。


だけど、サキのことがどうしても気になってしまうから……。


結局、そのまま誰も言葉を発することはなく、ついにお披露目本番の時を向かえることになってしまった。

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