ここにもいなかった
まぁ、そんなことをしていても状況は容赦なく進んで行くわけでして。
ようやくいつもの入口から王城へと入った私達は、控え室へと案内されたのでした。
ここまで来ちゃえばもう逃げたりなんて出来ないし、あとはなるようにしかならないだろうからね。
逃げるつもりはさすがにないけど。
一先ずは控え室で大人しく待機をして、出番がきたら係の人が呼びに来てくれるらしいから、それに着いていくのみ!
でも、気になることが一つ。
「あれ?サキはここにいるんじゃなかったの?」
そうなんだよね。
現地で合流しようって私宛ての伝言を残していたにも関わらず、サキの姿がどこにもないのよ。
てっきりここで合流出来ると思ってたんだけど。
「どうやら、サキ様は別室で準備をされているようです。
王城へは間違いなくいらっしゃっているようですよ」
私の言葉を受けて、ソフィアが控え室の近くにいた王城の使用人さんへと確認をしてくれた。
あー、そうなんだね。
まぁ、きちんと来てるなら良いと言えば良いんだけどさぁ。
だったら顔見せに来てくれても良いと思うんだよね。
サキの顔を見れれば緊張も少しはマシになると思うのに。
「サキ様離れしなさいというメッセージなのではありません?
フローリア様は、いつもサキ様にベッタリですから」
私が不満気な顔をしていたのに気が付いたのか。
レイシアにそんなことを言われてしまった。
いや、確かに自分でもそう思わなくはないけど……。
これからは伯爵にもなるし、もっと自立しなきゃとは思ってるけど。
今日くらいは良くないかなぁ?
そんな感じでぶつぶつと文句を言っていると、不意に扉がコンコンコンとノックされる。
一瞬サキかな?と思っちゃうけど、このノックの仕方は違うか。
それなら誰だろうと、ソフィアが対応に出てくれているのを見守っていると、そこにいたのは……。
「エフィーリア様!」
そうです。今日もこの世のものとは思えないほどに美しいエフィーリア王妹殿下だったのです。
「フローリア、様子を見に来ましたよ。
何も問題はありませんか?」
そう私を気遣ってくれながらふわりとほほ笑むエフィーリア様に、同性なのについつい見蕩れてしまう。
だってね?
エフィーリア様レベルなら何を着てても綺麗だろうなと思うんだけど、今日は私のお披露目ってことで国内の貴族がみんな来てる。
だから、それに合わせて当然ながらエフィーリア様も王族としてきちんと着飾ってるんだよ。
そりゃ見蕩れちゃうでしょ!
「ありがとうございます。
皆さまがとても丁寧に対応してくださるので、何も不便はありません」
これは本当だよ。
今のところ、今日も含めて私が接してる王城の使用人さんはそれ程大勢ではないけどさ。
でも、そのみんなが普段からすごく良くしてくれてる。
もちろん今日もね。
「それは何よりです。
問題がないようでしたらそろそろ移動をしたいのですが、よろしいですか?」
え?それってもしかしてエフィーリア様が会場までエスコートしてくれるってこと?
突然のありがた過ぎる申し出に、私が咄嗟に返事を出来ないでいると、それを見てどう思ったのか。
エフィーリア様がふふっと小さく笑う。
「サキではなくわたくしのエスコートでは不満かもしれませんが我慢してくださいね?
サキにはあと少しで会えますから」
「あ、もしエフィーリア様はサキが今どうしてるかご存じなんですか?」
今の感じだとそうだよね?
もしかして、エフィーリア様達と一緒にいたとか?
しかし、エフィーリア様はそれには笑顔を浮かべるばかりで答えてはくれなかった。




