いざ魔術士団へ
馬車に揺られた私達は、あっという間に王城へとたどり着いた。
ただ、今回はいつものように王族の居住スペースへとは案内されない。
今日の目的地は魔術士団の詰所なんだ。
なんでも、そこにある一室でサキの新しい身体が準備されているらしくて、サキの魂をそこへと移す魔法もそこで使うらしい。
サキがホムンクルスの身体になるのは極秘事項だから、人目に付かない場所ってことでそこになったとか何とか。
それに、今回参加する人達にはこのことを他の人には話せないようにする誓約魔法っていうのを使っているんだって。
そこまでしなくてもと思わないではないけど、仕方ないことなのかなと思ってる。
『まぁそうだね。
一応ホムンクルスの研究は禁忌扱いだし、フォーリア王国の了承は得てるんだろうけど禁術だって使うし』
そうだねぇ。
そう考えると、なかなかすごいことするんだね、私達。
『うん。ラシール姉妹や先生にはどれだけお礼してもし足りないくらいだよ。
……あと、陛下や魔術士団長にも一応感謝はしてる』
陛下はともかく、魔術士団長様にサキが素直に感謝したくない気持ちはわからなくはないけどね。
そこは素直にありがとうって言わなきゃダメよ。
『…………考えとく』
やれやれ。
と、そんなやり取りをしている間に気が付けば魔術士団の詰所が見えて来た。
あ、入り口のとこでナターニャ先生が待ってくれてるよ。
「先生、こんにちは」
「おう。
フローリアは……見たところ体調面で問題はなさそうだな。
サキも何か普段と違うような違和感とかはないか?」
私の挨拶に片手を上げて返してくれた先生だけど、仕切りに私達の体調を気にしている。
『私はなんの問題もないよ。いつも通り』
「私はすごい元気ですよ。
サキも問題ないって言ってます。
あの、何かありました?」
この世界で目覚めてからは風邪ひとつ引いてないし、健康そのもの。
起きたばっかりの時くらいだよ、体調良くなかったの。
少しだけ不安になりながら尋ねる私に、ナターニャ先生は首を振る。
「いや、問題ないならそれで良いんだ。
ただ、今回の魔法は二人にもかなりの負担がかかる事が考えられるからな。
もし体調が良くないってんなら、日を改める必要がある。その確認だ」
「あぁ、なるほど。
たしかにそうかもしれないですね」
『魂を移すなんてことをするんだからね。
ある程度の負担は覚悟してるよ。
フローリアも、もし途中で具合悪くなったらすぐに言いなよ?』
うん、わかった。サキもだよ?
『わかってるよ。大丈夫』
「お二人さん、相談は済んだか?」
「あ、はい!大丈夫です!」
どうやら私とサキが話してるのは先生にはお見通しだったらしい。
「よし、それじゃあ行くぞ」
そう言って私達を先導して歩き始めた先生の後に続き詰所の中へ入ると、以前団長様に挨拶した時とは別の方向へと向かって行く。
「今日行くのは研究用の部屋やらがある場所だ。
その中にな、機密管理のために団長の許可がないと使用出来ない部屋がある」
どうやら前を歩きながらも私の様子に気を配ってくれていたらしい。
見慣れない景色にキョロキョロしていたのに気が付いたようで、先生が説明してくれる。
つまり、その機密管理のための部屋が目的地ってことね。
「さ、着いたぞ。
他の連中はもう中で待ってる」
そう言う先生の視線の先には、何やら魔法陣のようなものが描かれた重厚そうな扉がある。
おぉ、如何にもって感じ。
まさに魔法!ファンタジー!といった様子に密かに感動してる私を前に、先生が扉に触れる。
すると、魔法陣らしきものが俄に光り輝き、ゆっくりと扉が開いていった。




