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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
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わからぬまま

結局、伯爵の処遇は陛下に任せることにした。


まぁ、そもそも私の仕事はあくまでも情報を聞き出すことで刑罰を決めることじゃないしね。


陛下や宰相によると、まだ調査が必要だから確定ではないけど、伯爵と実行犯の使用人は、諸々の事情を考慮した上で数年間の鉱山での強制労働になるだろうってことだ。

殺人や殺人未遂は基本極刑のこの国ではかなり軽めの処罰だと思う。


そして、ノートマン伯爵家は取り潰しではなく子爵家への格下げと一部領地と財産の没収になるだろうって。


当主が居なくなって、あの奥さんとレミアだけで大丈夫かな。

お婿さんをもらうのも大変だろうし、今婚約者がいるかは知らないけど、いても破談になるだろうしねぇ。


「ま、私が考えても仕方ないか」


「隊長、どうされました?」


自分の屋敷へとトコトコ歩きながら思わず声に出た呟きに、カレンが反応する。


伯爵の取り調べに、陛下への報告やらをしていたら、時刻はすっかり深夜。

むしろ、明け方に近いかもしれない。

空が薄らと明るくなり始めてるもんね。


だからか、私は必要ないって言うのにカレンが屋敷まで送るって無理矢理付いてきてるんだ。


「んーん。なんでもない。カレンも少しうちで休んでく?」


いつの間にかたどり着いていた屋敷の門を入りながらカレンに尋ねる。


「いえ、私はここまでで。

どうか、ゆっくり休んでください」


「そっか。カレンもゆっくり寝てね」


軽く手を振りながら別れると、そのまま屋敷の中へ。

さすがにまだみんな寝てる時間だろうと思っていたけど、エントランスには二つの人影がある。


「お嬢様、おかえりなさいませ」


「ただいま……って、アーシャもセバスチャンも起きてたの?」


そこにいたのは、私の専属兼侍女長のアーシャと執事長のセバスチャン。

執事だからセバスチャンってなんのギャグよって思ったけど、実際それが彼の名前だから仕方ない。


「お嬢様をお待ちするのは、当然のことですので」


そう答えるセバスチャンは今日もとっても姿勢がいい。

それに、きっと何があったかは二人とも知っているだろうに、いつも通りにしてくれてるのもありがたいね。


「そっか。ありがと」


だから、私もそれだけ答えて自室へと戻る。





湯浴みと着替えをアーシャに手伝ってもらいながら済ませ、一人でベッドに腰掛けながらぼーっと窓の外を眺める。


もう夜はすっかり開け、陽の光が差し始めた王都は昨夜の出来後なんてなかったかのような静けさに包まれている。


「……あ、まただ」


気が付くと、目から涙が溢れ出ていた。

最近、ずっとこうだ。


最初の頃はなんともなかったのに、ここ一年くらい。

任務を終えて屋敷に戻ると、突然涙が溢れてくる。


「なんなんだろ、これ」


私はなんも感じてないのに、いつも突然溢れて出てくる。


その理由もわからぬまま、私は一人。

ずっと涙を流し続けていた。

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