ちょっと?危ない人
「サキ、しかしな……」
「まあまあ、良いじゃなですかナターニャ。
サキ君が良いと言ってるんですから」
なおも私を止めようとしてくれているナターニャ先生を宥めるようにしている団長様。
でも、顔がにやけるのが隠せてないけど。
それに呆れた目を向ける私とジト目をしているナターニャ先生には気づいていないのか、気付かないふりをしているのか。
それはわからないけど、団長様は上機嫌で続ける。
「そもそも、私は何もサキ君に無理なお願いをするつもりは元からありませんよ。
大切な被検体……こほん。大切な『流れ人』にそのような無体な真似が出来るわけがないでしょう?」
あ、やっぱり交換条件的に何かをお願いはされるのね。
それにこの人、今さらっと私のこと被検体って……。
やっぱり協力をお願いするのはやめておこうかな……。
ナターニャ先生もほれ見ろと言わんばかりの顔をしてるし。
「大丈夫ですよ、サキ君。そんなに怯えないでください」
本能的に後ずさりかけていた私に、団長様が逃がしてたまるかとばかりに距離を詰めて来る。
やばい、口調こそ穏やかなままだけど、この日と何だか目が血走って来てる。
それに何となく息遣いも荒くなってるような?
「ただね、私としてはサキ君……以前のサキ君ですね。
彼女を救出した際には、貴女とサキ君の魔力を詳しく調べさせて欲しいだけなんですよ」
「ま、まぁ、それくらいなら……」
はぁはぁ言いながら迫って来るのがあまりにも怖すぎるけど、要求は無茶なことじゃないと思う。
でも、私とサキは一つの体を共有してるけどそれぞれの魔力を調べるなんて可能なのかな?
ニーナちゃんの言う通りなら、私とサキはそれぞれ別々の魔力があるらしいから可能なのかもしれないけど。
「ほら、団長。そのくらいにしてくださいよ。
サキが本気で怯えてますから」
なおも何やらブツブツと呟いていた団長様を、うんざりした顔で止めるナターニャ先生。
今日のナターニャ先生はこういう役割なのね。
私としてはもう途中から団長様の言葉は耳に入れてなかったんだけどね。
だって怖いもん。
「おっと、これは失礼。
いやぁ、何しろあのラシール家と共同研究が出来る上に、サキ君の魔力まで好き放題調べられると思うとついね。
研究者としての血が騒いでしまいましたよ」
「あはは……」
色々とツッコミたい気もするけど、これ以上はあまりこの話題に触れたくないというのが強くて曖昧に愛想笑いすることしか出来ない。
でも、団長様の言うことで少し気になることもあるんだよね。
ラシール家はフォーリア王国でも力のある侯爵家っていうのは私も知ってるし、フォーリア王国はこのイシュレア王国よりも魂とかの研究が進んでるっていうのも教えてもらった。
でも、今日団長様と話した印象だとフォーリア王国っていうよりはラシール家がそうなんだっていう感じがする。
ミリア嬢からはその辺のことは何も聞いたことがなかったんだけど、どうなんだろう?




