微かな手掛かり
「反応はなくとも、そこにサキ様がおられるのは感じてらっしゃるんですよね?」
確認するように言うソフィアに頷く。
目覚めた時からずっと変わらずサキの存在は感じ続けているから、それは間違いない。
「サキ様がおられる今ならまだ対応が可能かもしれません」
「本当!?」
ソフィアの言葉に思わず大きな声が出てしまったけど、レイシアも驚いているらしく普段のようにその事を窘めてくる様子もない。
それぐらい彼女も驚いてるってことだよね。
「とは申しましても、私が何かを出来るというわけではないのです。
ただ、隣国では魂と魔力に関する研究が我が国よりも盛んだと聞いております。
そちらを頼ることが出来れば、私たちの知識にはない対処法もみつかるのではないかと」
「なるほど……。
その隣国っていうのは、神聖王国?」
もしもそうだとしたらこう都合かもしれない。
今この辺境伯領には次期教皇になるだろうクラリスさんがいるし、聖女であるヒマリちゃんだっている。
あの二人を頼ることが出来れば、何かしらの解決策が見つかるかもしれない。
そう思って尋ねた私に対し、しかしソフィアは首を振る。
「いえ、神聖王国ではありません。
確かに神聖王国なら頼れる方が現在ここに滞在しておられるので助かったのは事実なのですが……」
そうなんだ。
それは少し残念ではあるけど、仕方ないよね。
でも、神聖王国ではないとなると?
「それではフォーリア王国ですか」
私の考えてたことを見透かしたかのようにレイシアが言うのに、ソフィアも頷く。
でも、フォーリア王国はサキも言ったことがないし頼れる知り合いなんて……と思った時に思い出した。
そうだ。いるじゃない。
学園で知り合い、卒業した今になっても手紙のやり取りをしている人たちが。
「ラシール姉妹を頼ってみよう」
「なるほど。かの御方がおられましたか」
私の言葉にレイシアが頷くと、ソフィアも我が意を得たりとばかりに頷いている。
「ラシール侯爵家は、フォーリア王国内でもかなりの力を持つ家門と聞いております。
加えて、サキ様が現在も交流を続けておられたミリア様は嫡子でもあられます。
何かしら力になって頂ける可能性は高いのではないかと」
一方的に頼るのは申し訳ない気がしないではないけど、今はそれどころじゃない。
それに、ラシール姉妹だって手紙で何かあれば何時でも頼って欲しいって書いてくれてたもんね。
だったら、きっと力を借りても迷惑にはならないはず。
「そうだね!
じゃあ、私はすぐにラシール姉妹に手紙を書くね!
だから二人は……」
「わたくしは他の皆様にもこのことを共有してまいりますわ」
「私はサキ様が書かれた御手紙をすぐにフォーリア王国まで届けられるように手配してまいります」
勢い込んで話す私に、二人は心得えていますとばかりに落ち着いて答えてくれる。
本当に頼りになるなぁ。
よし。
諸々は二人に任せて、私は少しでも早く手紙を書き終えないと。




