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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第三部 辺境の魔女
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キラキラしているみんな

私の言葉に二人は頷く。

そしてふっと浮かべる微笑みは、儚げで美しくはあるんだけど、正直この二人には似合わない気がする。

この子達に似合うのは、いつものような明るく朗らかな笑顔だと思うから。


「ナタは近衛騎士を目指して子どもの頃からずっと努力しておりますし、リズも一人娘として将来は婿取りをして領地を引き継ぐために日々様々なことを学んでいるのをずっと近くで見てきました。

今回エフィーリア様に同行して来たのも、その一環だそうです」


そう言うアンネの視線の先では、ワナイ騎士団長と熱心に話しているナタリーや、エフィーリア様に付き従って色んな人と交流しているリズベット嬢の姿がある。


「エミリーとニーナも、学園を卒業した後は官吏として国のために働きたいそうです。

クラスの平民の皆さんも、そのように考えておられる方がほとんどだそうですわ」


どこか羨ましそうにコーネリアの見つめる先では、エミリーちゃんとニーナちゃんがメモ帳片手にノフロンの役人達を相手に何か質問をしているのだろう姿が見える。


「目的を持って日々努力されている皆さんは、本当にキラキラしていますわ。でも……」


「わたくし達にはそういったものがないのです。

それが、あまりにも情けなくて……」


なるほどなぁ。

周りと自分達を比べて焦ったり悩んだりしてしまう二人の気持ちはわかるけど。


「別に急いで目標を決めなくてもいいんじゃない?」


「「え?」」


確かに、目標を持って努力しているみんなは立派だと思う。

応援してあげたいとも思うし、だからこそ、もしもそれを邪魔するやつがいたら私がどんな手を使っても排除する。


でも、今それが見つからないからって自分を卑下する必要なんて少しもない。


「私なんてさ、毎日平和で穏やかに過ごせればそれでいいとしか考えてないよ?」


「ですが、サキ様はこれまで数え切れない程の功績を上げて来られたではないですか」


まぁ、確かにそう言われてはいるね。

しかし、私はアンネのその言葉に肩を竦めてみせる。


「あれは全部仕事として言われたことをやってただけだから。

お給料もらって、美味しいご飯を食べるためだよ。

そもそも、どの作戦も私一人の力じゃないからね?

隊員のみんながいたからこそ上手くいったの。

それに、あいつらを排除しなかったら、こうして毎日だらだらして暮らすのなんて無理だっただろうしねぇ」


あのままアーセル公爵一派の計画が成功して、政権がひっくり返っていたらいまこの国がどうなっていたかなんて考えたくもない。


このノフロンだってそうだ。

帝国の思わく通りにここが帝国領になっていたら、領民達のあの笑顔はきっとなかった。


「もう、それではサキ様は毎日だらだらする為に近衛騎士のお仕事をされていたみたいではないですか」


「そうだよ?知らなかった?」


コーネリアの言葉にニヤリと笑ってみせると、二人揃って一瞬ぽかんとしたような表情を浮かべたあと、ほんの少しだけ笑ってくれた。

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