アンネとコーネリアの悩み
おかげさまで200話です!
いつもありがとうございます!
「確かに皆で集まることは好きですわ」
「ただ、わたくし達の場合は、家門の関係もあってなんと言いますか、もっと荒々しいものと言うか……」
「「まぁ、パーティと言うよりは宴会ですわね」」
その言葉に、少し驚いたけど、なるほどと納得出来る部分もある。
アンネの父親のフューリー侯爵は王国騎士団の副団長だし、コーネリアの父親のルーベック侯爵は王国軍の将軍だもんね。
両家ともに、長く続く武門の家だ。
私も特に親しいわけではないけど、近衛時代に顔を合わせたことはある。
両侯爵ともに軍人らしいかなり豪快な人柄だったから、たぶん令嬢らしからぬ二人の日々の行動もその辺から来てるんだろうなとは思う。
「それにしても……」
屋内の様子に目を向けながら、アンネがぽつりと呟く。
夜風がアンネの蜂蜜色の髪を揺らす。
いつもは勝気に輝いているガーネットのように赤い瞳には、どこか憂いを含んだ色が浮かんでいる。
「エフィーリア様もクラリス様もご立派ですわ。
わたくし達と同年代だというのに、それぞれのお立場でしっかりとお役目を果たされておりますもの」
「アンネ?」
「その……」
普段とは異なる様子に首を傾げる私に、代わりにとばかりにコーネリアが口を開く。
しかし、もじもじとしながら青みがかった銀色の髪を弄るだけでその先が続かない。
何かを言いかけるように口を開きかけては閉じるのを繰り返しているし、琥珀色の瞳は不安そうに揺れている。
「二人ともどうしたの?何かあった?」
「あの、サキ様」
「大変情けない話にはなるのですが、少し話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。話してみて?」
意を決したように顔を上げる二人に頷く。
「わたくしのフューリー家は、弟が嫡男として家を継ぐことが決まっております。
本来なら、わたくしの役目はどこかフューリー家にとって利益のある家に嫁ぎ、家門の繁栄の一助となることなのでしょうが、父は権力欲がない方ですので……」
「我がルーベック家も似たようなものです。
お兄様が跡継ぎとして立派にお役目を果たされていますし、わたくしも政略結婚は求められておりません。
両親は、わたくしの将来は自分の好きなように決めて構わないと仰ってくださっていますわ」
この国の貴族も、政略結婚は当たり前で令嬢達は家のためにと親が決めた相手に嫁がされることが多いと聞く。
ましてや、今のように貴族そのものの数が減っている中では、それぞれの家が生き残るために、そしてその中で少しでも力を持つために横の繋がりはより重要になって来るのだろう。
「わたくしが学園で仲良くなった皆さんも、その多くが卒業後は家のために嫁ぐことが決まっておられるそうですわ」
「それが当たり前の中で、自分で生き方を決めて良いと言われているわたくしとアンネはとても幸せなのだろうということもわかっているのです」
「家のために嫁ぐことが不幸だとは思わないのですが」と言って俯く二人に、なるほどなと思う。
自由に生き方を決められるっていうのは、確かに良いことだとは思うし、それが叶わない人から見たらすごく羨ましく感じられるだろうね。
でも、同時にそれは自分自身で人生に責任を持つってことでもある。
それで二人は悩んでるのか。




