歓迎パーティー
結局、ヒマリとはそのまま話をすることもなく歓迎パーティの日を迎えた。
まぁ、これに関しては私が避けるとかそれ以前の問題だ。
今回クラリス嬢とヒマリは国賓としての扱いになる。
その対応は、王妃様やハーパー公爵と共にイシュレア王国の外交を担っている一人であるエフィーリア様がすることがどうしても増えるからね。
そうは言っても、スチュワートがヒマリの相手を私に任せるみたいなことを言ってたからどうなるかわからないんだけどね。
一応追放中の身である私にそんなことをさせようとするのはどうかって思うんだけど、たぶんこれは言っても無駄なやつなんだろうなぁ。
何より、まず間違いなくヒマリが今回ノフロンに来たのは私目当てだろう。
もしかしたら、イシュレア王国への訪問そのものがそのために計画されたんじゃないかって邪推してしまうけど、それはさすがに考え過ぎだと思いたい。
今も、パーティ会場の一角でクラリス嬢と一緒になってエフィーリア様達と歓談してるけど、ちらちらとこっちに視線向けて来てるもんな。
「サキ様。少し休まれますか?」
「そうだね、少しテラスで風に当たろうかな」
今日も私の護衛としてずっと付き従ってくれているカレンが、気を使って声を掛けてくれるのでお言葉に甘える。
また付けさせられてるコルセットのせいでご飯も全然食べられそうにないし。
テラスへと出ると、そこには既に複数の人影があった。
「あ、先客か」
歓迎パーティと言っても、今夜のはそれほど大規模なものじゃない。
精々がノフロンの役人達や騎士団の関係者と、学園御一行くらい。
だから、たぶん知ってる人だろうから挨拶くらいはしておくかと軽い気持ちで近付いてみると、案の定その人影は私のよく知っている子達だった。
「まぁ、サキ様!」
「サキ様も休憩しに来られたのですか?」
「うん、パーティなんて慣れてないからねぇ。
気疲れしちゃって」
いつも笑顔の元気印の侯爵令嬢、アンネとコーネリアだ。
私に気が付いて、今日もにこやかな笑顔を見せてくれる。
でも、気の所為かな?
振り向いた瞬間に見えた二人の顔が、どこか沈んでいたような気がしたけど。
「確かにパーティは肩が凝りますわね」
「特に王都の夜会はもう……。華やかな反面、めんどくさいことも多くて」
私の言葉に納得と頷く二人に、少し意外に感じる。
もう社交界デビューしてる年齢だし、侯爵令嬢っていう立場上、夜会に出ることも多いだろうに。
特にこの二人の場合、人付き合いとかも好きそうだから夜会なんかは好きなんじゃないかってイメージがあるんだけど。
そう訊ねる私に、二人はいつもの人好きのする笑顔とは違う、少し困ったような顔をする。




