神聖王国からの訪問伺い
「…………えーっと、スチュワートさん。
もう一度言ってもらえるかな?」
「ええ。何度でも申し上げましょう。
ライオネア神聖王国より教皇猊下のご息女、クラリス様とおっしゃるようですな。
そのお方と、聖女のヒマリ・サカシタ様がこのノフロンにお越しになります」
うわぁ、やっぱり聞き間違いじゃなかったよ。
わざわざご丁寧に名前まで言ってくれちゃって。
「それって訪問断るわけには?」
「はっはっはっ。これは妙なことを仰る。
そのようなこと、出来るはずがございませんでしょう。
このスチュワート、ノフロンを預かる代官として、既に了承する旨をお伝えしてありますぞ」
そんなことを言いながら、意味有りげこちらを見てくるスチュワート。
これ、もしかして私がヒマリと気まずい別れ方をしたの知ってたりする?
いや、でもあの時の出来事は王国では私の元部下達しか知らないはずだよね。
帰って来てからも誰にも話してないし……。
何か独自の情報網を持ってる可能性もこの人ならありえるけど。
そもそも、普段は散々私のことを辺境伯扱いしようとしてくるくせに、こういう時だけ代官ていう身分を使うのはどうなのよ!?
それに文句言ったら、本当に辺境伯にされそうだから何も言わないけど!
「それでですな、サキ様。
お二方とはご面識がおありでしょう?
ノフロンへお越しになられた際は、サキ様にお相手を任せてもよろしいですかな?」
「え!?いや、それは……」
「よろしいということですな。
では、お任せ致しますぞ」
「あっ!ちょっと!!」
戸惑う私に構うことなく、スチュワートは足早に退室してしまった。
きっと本当に忙しいんだろうとは思うけど……。
「あの、サキ様?」
「ん?あぁ、ソフィア。どうしたの?」
「いえ、その。
クラリス様という方とは私は面識がないのでわかりませんが、もしかして、聖女様と何かあったのでしょうか?」
「……なんで?」
ソフィアの質問に、内心ドキリとするも、何とか平静を装って返事をする。
「私の考え過ぎなのかもしれませんが、以前聖女様がお屋敷に来られた時はかなり親しげにされていたようにお見受けしたのですが、今のご様子を見ると気になってしまいまして……」
あぁ、そうか。
ソフィアもヒマリが王都の屋敷に来た時は同席してたもんな。
まぁ、あの時もあの時で中々酷かった気はするけど、ソフィアには親しくしてるように見えてたわけか。
それが、訪問の連絡受けただけでこんなに焦ってたら、不思議にも思うよね。
「うーん、ちょっとね。
でも大丈夫、ちゃんと相手するから」
訪問団の代表がクラリス嬢なら、私が相手をするメインはクラリス嬢だよね?
彼女とは神聖王国で出会った時には政治的なやり取りしかしてないけど、まぁそれなら大丈夫でしょ、たぶん……。




