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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第一部 魔女と聖女
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王妃様の心配

「そんな訳で、ノートマン伯爵の夜会に呼ばれました」


王妃様の部屋へ行くと、予想通り今日もたくさんお菓子を用意してくれていた。

どうやら、私が王城へ来てたのは訓練場にいた他の部隊の近衛から報告が入ってたみたいね。


「そう……ノートマン伯爵がサキを……」


軽く雑談を交わした後、さっきノートマン伯爵から夜会に誘われたことを報告したんだけど、どうにも王妃様の反応が良くない。

何か心配なことでもあるんだろうか?


「わたくしとしても、サキが夜会に行くことは賛成よ。

いいお相手を見つけて欲しいとも思うし」


……ん?

今王妃様なんて言った?

私の後ろに立っているヒギンスとカレンも固まってるんだけど?


「あら?そんなに驚くことではないでしょう?

サキだってもう23歳。結婚してても何もおかしくないわ」


「いや、でも私見た目こんなですし……」


王妃様、私の年齢きちんと把握してたのか。

最初に会った時に伝えたことなんてすっかり忘れて、見た目通りの年齢だと思ってるんじゃないかと思ってたけど。


「あら、見た目の幼さは関係ないわ。

それに、そのままでもサキはとっても魅力的ですもの」


後ろ二人、頷いてんじゃないよ。

それに……。


私みたいに壊れた人間が。

大勢の血に塗れた魔女が幸せな家庭を築こうと考えるなんて、きっと許されないことだから。


「あの、王妃様。さっきノートマン伯爵からの招待なのを気にしてたみたいでしたけど、何か問題ありそうなんですか?」


少し気持ちが沈みかけていたのを誤魔化すように話を変える。

こういう時に張り付いた無表情は便利だね。

私の知られたくない気持ちを隠してくれる。


「え?あぁ、そうね……」


案の定、王妃様は何も不審に思うことなく話に乗ってくれる。


「大丈夫だとは思うけど、ノートマン伯爵は例の公爵の派閥に近い位置にいたから少し気になるのよね。

表向きは中立派ということになっているし、公爵の起こした事件にも直接的な関与はしていなかったわ」


まぁ、今も平気で王城内を彷徨いていたくらいだし、実際あの事件には何も関与していないんだろう。


でも、公爵と関わりがあった貴族がこのタイミングで私を夜会に招待するというのは確かに気になる。


「大丈夫ですよ、王妃様。部隊のみんなも連れて行きますし、万が一何か企んでても、あんな伯爵程度に私をどうこうするなんて不可能ですから」


「我々がお守りしますので、ご安心ください」


余裕綽々で応える私に続き、ヒギンスとカレンも自信に満ち溢れた様子で王妃様に宣言する。


「そうね、貴女達ならきっと大丈夫ね」


微笑んでそう言ってくれる王妃様に、私は出来ない笑顔の代わりに頷いて返す。


さて、美味しい料理とお菓子だけが楽しみだと思っていた夜会だけど、思ったより楽しいことになりそうだ。

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