エフィーリアへの挨拶 2
「ですが……いえ、貴女がそう言うのでしたら、わたくしの方からあれこれ言うのはやめておきましょう」
エフィーリア様はまだ納得は出来ていない様子ではあるけど、ひとまずは頷いてくれた。
「ええ、そうです。
なんせ”魔女”ですから。
気に食わない連中はまとめてやっちゃうんですよ」
「全くもう、貴女という方は本当に」
あ、やっと笑ってくれた。
どんな表情をしていても超絶美少女であることは間違いないんだけど、どうせならやっぱり笑ってて欲しいもんね。
「ですが、サキとはもう一緒には学園へ通えないと思うと……。
それはやはり寂しいですね」
「そうですね、それに関しては確かに残念には思います」
「クラスメイトの皆様も残念に思われるでしょうね」
しっかり者のナタリーにリズベット嬢。
案外と強かな一面もあるエミリーちゃんにニーナちゃん。
いつも大騒ぎしているアンネとコーネリア。
なんやかんやでノリのいいクラスメイト達。
それに留学生の仲良し姉妹、ミリア嬢にカリナ嬢。
それ程長い期間ではなかったけど、みんなと過ごした時間は本当に楽しかったし、きっと一生忘れることはないだろうな。
「私としても残念だとは思いますけど。
でも寮の引き払いとかもあるから学園にはもう一度顔は出すので、その時にみんなには挨拶出来たらなと思ってます。
それに、学園では一緒に過ごせなくても、またどこかで会うこともあるとは思うんで」
留学生のラシール姉妹は難しいかもしれないけど、他のみんなとは同じ国内にいるんだもん。
また会う機会だってきっとあるはずだ。
「ええ。仰る通りですね。
顔を見せてくれるだけでも皆様喜ばれると思いますので、是非そうなさってください。
ところで、サキはこの先どうなさるのですか?」
「あぁ、それなんですけど……」
私の今後の心配をしてくれているエフィーリア様に、陛下から言われた辺境行きの話を伝える。
「なるほど……。
諸々の処分はあくまでも見せ掛けで、本当の目的はそちらという訳ですか」
「そうみたいです。
これに関しては上手くやられたなって」
正直言うと、これに関してはまだちょっとだけ悔しい気持ちはある。
「恐らくは宰相の発案でしょうね。
あの方はこういう企みがお得意ですから」
「あの陰険メガネ……」
エフィーリア様の言葉に、思わず宰相への恨み言が漏れた。
まぁ、結局は向こうの狙い通りの結果になってるんだから、このくらいはきっと許される。
「まぁ、今のを宰相が聞いたらものすごーく深い皺を作りそうですね」
エフィーリア様が自分の眉間を指差しながらくすくすと笑う。
ほらね、笑ってくれてるもん。
問題ないんだよ。
さっき言ったように、もう会えないことはないだろうけど、辺境に行ったら気軽には会えなくなるし、お互いの立場もあるから、もしかしたら、こうやって一緒にお茶しながら雑談するのは最後になるかもな。
そんなことを考えながら、そのまましばらく雑談を続けてエフィーリア様とは別れた。




