めんどくさい招待
「それでは、当日お待ちしておりますぞ!」
私が受け取ろうとしないのを見ると、ノートマン伯爵はヒギンスに無理矢理招待状を押し付けると、足早にその場から去って行く。
「……やっぱりあいつ殺してくる」
「いやいやいや、隊長待ってくださいってば!」
イラッと来たからノートマン伯爵を殺しに行こうとする私を、カレンがしがみつく様にして引き留めて来る。
「カレン。邪魔」
「隊長怖いですから!殺気出さないでください!!
ヒギンス副隊長も止めてくださいよ!」
押し付けられた招待状を持ったまま、大人しくしていたヒギンスがカレンの言葉に口を開く。
「そうですな。確かにカレンの言う通り隊長の手を煩わせるほどのことはありません。
私が始末して来ましょう」
「そう?でも、どうせなら少し遊びたいから生け捕りにして欲しいんだけど」
公爵の時が少し物足りなかったから、その分をノートマン伯爵で発散するのもいいかもしれない。
うん、いい考えだ。さすがはヒギンス頼りになる。
「二人とも何言ってんですかっ!!
流石にまずいですからそれ!!」
カレンはまだ不満みたいだ。
私の世間的なものを気にしてるんだろうけど、別にノートマン伯爵で遊んだことで周りからどう思われようがどうでも良いのに。
ヒギンスにチラリと目配せをすると、小さく頷いて私にしがみつくカレンを引き剥がしてくれる。
「あ、隊長!ノートマン伯爵は美食家としても有名なんです!
きっと夜会には美味しい料理がたくさん出ますよ!」
「……ふむ」
身軽になって歩き出した私は、カレンの言葉に足を止める。
「お菓子も?」
「もちろんです!すっごく美味しいお菓子もたくさんです!」
ヒギンスに押さえ付けられたまま、ブンブンと思いきり首を縦に振っているカレン。
「それなら……うん。
お菓子が美味しかったら殺すのはやめようかな」
仕方ない。
その夜会までは一度保留にしておこう。
「良かった……」
ヒギンスから解放されたカレンは、ぐったりしながら呟く。
あんな奴のためにそんなに頑張らなくていいのに。
全くお人好しと言うかなんと言うか。
「ほら、早く王妃様のとこに行くよ」
それだけ声を掛けると、さっさと歩き出す。
保留にするとは決めたけど、やっぱりイライラは残ってるから、美味しいお菓子を食べさせてもらって気分転換しなくちゃ。




