言い分
「本当に情けないね、あんたら。
普段は威張ってるくせにこんなもんなの?」
失神した令息にはもう視線すら向けることなく酷薄な笑みを浮かべる私を、残った令息達は化け物を見るように見ている。
その目にはどれも絶望の色が浮かび、歯の音が合わないほどにガタガタと震えている。
お願いだから、これ以上漏らさないでね?
「わ、我々が何をしたと言うんだ……」
ここに連れて来てから今までずっと、震えるばかりで何も言わなかったハーパーがやっと口を開く。
「だから、最初に言ったでしょ?
あんたらがあの空き家で何をしてたかはわかってるって」
「こんな目に合わねばならないようなことは何もしていないっ!!」
あ?なんだって?
「ひっ……」
虚勢を張るかのように大声を出したハーパーだけど、それが私を苛立たせたことに気が付いたのか。
また小さく悲鳴をあげる。
「帝国の間者と密会しといて、よくそんなこと言えるな?」
まぁ、あのフードの人物が本当に間者かは今のところわからないけど、ロメア家に出入りしてるってことはかなりの高確率でそうなのは間違いないからね。
「え……?帝国の?」
は?まさかこいつら、相手が何者かもわからずに密会してたわけ?そこまで馬鹿なの?
「そうだよ。あいつは帝国の間者。
つまり、あんたらは全員帝国との内通者ってわけ。わかった?」
「そ、そんなことしていない!」
「そうだ!あいつが帝国の人間なんて知らなかったんだ!」
ここに来てようやく自分達が何をしたのかわかったのか。
令息達が口々に喚き出す。
あー、やかましいな全く。
「ギャーギャーうるさい。
これ以上余計なことしか言わないんなら全員殺すよ?」
その一言で、全員が黙る。
「で?そろそろ何話してたのか教えてもらおうか?」
「そ、それは……」
「素直に答えるのと、死ぬの。
どっちがいいの?
私としてはあんたらを殺す方が楽しくていいんだけど?」
「こ、答える!答えるから殺さないでくれっ!」
にやっとしながら軽く脅せば、遂に観念したのか、ハーパーはビクビクしながら口を開いた。
「あ、あいつは国内をまわる行商人だと言っていたんだ。
それで……」
「それで?」
「その……地方には現在の陛下の政策に不満を持つ者が多くいる。
だから、我々が王都で声を上げればそれに賛同する者は多いと……」
「なに?謀反でもしようってわけ?」
「は!?ま、まさか!そんなことは考えたこともない!」
私の指摘に焦ったように否定するハーパーだけど、まぁそうだろうね。
こいつにそんな度胸があるはずもない。
絶対に安全な場所から、絶対に自分には逆らわない相手に威張りくさるしか脳のないやつなんだから。
そもそもだ。
今の陛下の政策、特に平民の雇用推進政策は地方貴族ほど支持者が多いんだ。
理由としては色々とあるけど、そんなことは少しでも国内情勢を調べればわかることなのに、こいつらは誰一人そんなことすら知らなかったのか。
まぁ、自分の耳に心地良い言葉しか聞こうとして来なかったんだろうね。




