捕縛
壊れた扉を跨ぎながら空き家の中へ入ると、そこにいたのは突然の出来事に呆然としているハーパーを始めとする令息達。
やはり所詮は甘ったれた貴族のガキども。
咄嗟の出来事に対応するような臨機応変さは誰も持ってないらしい。
「全員『動くな』『魔法の使用も禁ずる』」
間抜け面で立ち尽くす令息達の動きと魔法をとりあえずは封じる。
ヒギンスとカレンが警戒してくれてるから大丈夫だとは思うけど、魔法使われるとめんどくさいから念の為ね。
ざっと室内を見渡すと、そこにいる人数は八人。
事前の報告と同じってことは、全員がここに揃ってるみたい。
「お、お前は!?何故ここに……!?!?」
ようやく硬直から復活したらしいハーパーが、アホなことを喚き出す。
そして、今更動きが封じられていることに気が付いたらしく、体を動かそうともがき始めている。
「王室近衛騎士団だ。お前達を連行する」
「なっ!?」
「ふ、ふざけるな!」
「なんの権限があってそのようなことを!?」
「この襟章見てわかんないの?」
口々に喚き始めた令息達に、真っ黒な私達の部隊の襟章を見せる。
悪名高き、死の象徴とも呼ばれる襟章を。
「貴様っ!俺が誰だかわかっているのか!?
こんなことをして許されると思ってるのか!!」
「ハーパー公爵家のおぼっちゃんでしょ?
許されるか決めるのはお前じゃない」
「なっ!?」
私の言葉に驚愕に目を見開くハーパー。
初対面でもないのに何をそんなに驚いてるんだか。
「ここで何をしていたのかは全部わかってる。
私相手に逃げられると思うならそうしてもいいけど、大人しく従う方が身のためだよ?
まぁ……」
一度言葉を切って、にっこりと微笑む。
「死にたいなら好きにしていいけど?」
こてんと小首を傾げながら言うと、元々悪かったハーパー達の顔色が真っ青を通り越して白くなる。
「お、俺にそんなことが出来るわけ……」
「ねえ」
寝言をほざこうとしているハーパーの言葉を遮る。
「私達が誰かわかってる?
あんたらなんて一瞬で殺せるんだけど?」
少なくとも全員は殺すつもりはないけど、この脅しは結構効果があったらしい。
「ひっ……」
「ぼ、僕は悪くない!!」
「全部ダスティン様の指示に従っただけなんだ!」
ハーパーが怯えた声を出したのを合図にしたかのように、他の令息達が口々に喚き散らす。
あらまあ、誰もハーパーの味方をしようとしないよ。
人望ないんだねぇ。
「はいはい。
言いたいことは後でゆっくり聞いてあげるから。
だから、みんな『黙ってね?』」
令息達を黙らせると、ちらりとヒギンスに目配せをする。
それだけで察してくれるヒギンスは、通信魔法で外にいる隊員達に指示を出す。
「よし。じゃあ、連行して」
私の言葉に従い、カレンがハーパー達に縄をかけていく。
さて、おぼっちゃま達と少し遊びましょうかね。




