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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第二部 魔女と学園
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リズベットの想い


「うん、ありがとうね。

でも、やっぱり少し意外な感じはするね。

リズベット嬢がこれだけ積極的に色々と関わってくれるのって」


もちろんありがたいし嬉しいんだけど、リズベット嬢個人の性格ってよりは、彼女の実家であるメステル侯爵家のことを考えるとね。

中央の権力と距離を取っていた家だから、エフィーリア様や私とこんなにも親しくしてくれるなんて思わなかった。


「我が家の家風を思えば、サキ様がそう思われるのも無理はないですね」


私の言葉にリズベット嬢も頷く。


「やっぱりナタリー達がいるから?」


「確かにそれもあります。

ですが、それだけではないのですよ」


ナタリーとは気が合うみたいだし、外出禁止中の二人とは幼なじみだ。

その影響かなって思えばわからない話でもない。

そう思ったんだけど、リズベット嬢は首を振る。


「サキ様もご存知のように、我が家はこれまでずっと、中央の権力争いからは一歩身を引き領政に集中して来ました。

それこそが、陛下から領地を任された領主として国に尽くすことだと考えていたからです。

ですが、陛下が進めておられる平民の雇用推進政策を見てもわかるように、現在我が国は大きな転換点を迎えています。

そうして国が変わっていく中、我が家もまた、変わる必要があるのだろうと。

わたくしはそう思うのですよ」


そう語るリズベット嬢の表情は、どこか楽しそうに見える。


「そっか。

偉いね、リズベット嬢は。

私はそんな難しいことなんてなんも考えてないからさ」


「あら。そうなのですか?」


「うん。私はとりあえず毎日平和に暮らせればそれで良いかなってくらいしか考えてないよ」


難しいことを考えるのは陛下達に任せておけばいいと思ってるし、むしろ私のような政治に関するきちんとした知識も経験もないような人間が関わったらダメでしょ。

任務として言われたことはやるけどね。


「わたくしはサキ様がその中で大きな役割を果たされるのではないかと思っておりますが」


「私が?」


「ええ。きっとそうなるかと」


「そうかな?」


何か重要な任務を任されるとか?

でも、私は汚れ仕事専門みたいなもんだしなぁ。

そんな私が重要な役割を任されるような事態にはならないで欲しいんだけど。


「ふふっ。色々と小難しいことを申し上げてしまいましたが、実際はとても単純なことなのです」


悩み始めた私を見て、リズベット嬢はくすくすと笑っている。


「結局は、わたくしも皆様と共に過ごすこの時間が好きなのですわ。

皆様のお側は、とても居心地がいいのです」


「あぁ、それならよくわかる。

私もそう思うよ」


みんないい子ばかりで、一緒にいて本当に居心地がいいよね。

いつまでもこんな日々が続いて欲しい。

ついそう思ってしまうほどに。

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