言わないとは言ってないからね?
おっと。驚き過ぎて軽く固まってたわ。
いやだって……あぁもう。
「……カレン、ナタリー。少し離れるからみんなのことお願いね」
「?はい、お任せください」
突然のことにきょとんとしているカレン達にその場を任せて、私は『影』が教えてくれた方向へと足を向ける。
みんな不思議そうにしてるけど、今は黙っておいた方がいいかな。
とりあえず、少しお話しないと。
「こんなとこで何やってんですか……」
熱い視線送っていた発信元へとゆっくりと近付いて行くと、ジト目で声をかける。
ちなみに『影』の人はいつの間にか完全に姿を消している。
「!!」
どうやら、相手は私のことは視界に入っていなかったみたいで、ビクリと肩を震わせてこちらを見る。
いや、私真正面から歩いて来たのになんで気付いてないのよ。
「さて、どういうことか説明してもらえますよね?陛下?」
そう、視線の主はまさかのこのイシュレア王国の国王陛下だった。
一応変装はしているみたいで、平民が着るような服装にはなってるけどさ。
何してんの全く。
「い、いやこれはだな……」
目を泳がせながらしどろもどろになってる陛下。
陛下の後方に目を向けると、見覚えのある騎士達が数名控えている。
私の視線に気が付いて苦笑いしている彼らは第一の隊員だったかな?
陛下に巻き込まれたんだね、お気の毒に。
「『影』も困ってましたよ。
エフィーリア様のことが心配だったのはわかりますけど、さすがにご自身で来られるとかありえなくないですか?」
「別にサキ達の護衛を信用していないわけではない。
だか、エフィーリアは街歩きなどしたことがないではないか。
万が一ということもありえると思うと……」
「はぁ……」
国王陛下相手にめちゃくちゃ無礼なのはわかってるけど、それでも深い溜め息が出てしまうのは仕方ないと思う。
陛下がエフィーリア様を溺愛していて過保護なのはわかってたけど、まさかここまでなんて。
「第一の騎士達まで巻き込んで。
このこと、王妃様はご存知なんですか?」
「そ、それはだな……」
私が口にした「王妃様」という言葉に、陛下が露骨に動揺し始める。
あぁ、これは言ってないな。
「今度城に行った時に王妃様にこのことは報告しますからね」
「ま、待て!それはまずい!」
陛下が本気で焦ってる。
このことが知られたら絶対王妃様に怒られるもんね。
怒った王妃様は本当に怖いし。
「だったら、もう大人しく城に帰ってください。
エフィーリア様のことなら大丈夫ですから」
慌てる陛下に冷たく言い放つ。
陛下はそれでも何かぶつぶつ言ってたけど、やはり王妃様が怖いのか。
大人しく王城へと帰って行った。
去り際に護衛の近衛騎士達から何度もお礼を言われたけど、部隊は違っても同じ近衛の仲間だしね。
苦労はわかるからいいのよ。
あ、もちろんこのことは後日必ず王妃様に報告するけどね。
私、王妃様に言わないとは一言も言ってないもん。




