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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第二部 魔女と学園
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ゴチになります

「そ、それでは……」


私の説明通りに横向きに串焼きを持ち直したエフィーリア様が、意を決したように小さな口で串焼きにかぶりつく。


「これは……」


もぐもぐとお肉を食べていたエフィーリア様の目が徐々に見開かれていく。


「思っていた以上に美味しいです。

この甘辛いタレがお肉にとてもよくあっていますね」


キラキラと瞳を輝かせているエフィーリア様に、エミリーちゃんも嬉しそうにしている。


「気に入っていただけて良かったです!

あの屋台はここでもすごく人気があるんですよ!」


その言葉に、屋台の方に目を向ければ結構な人数が並んでいるのが見える。

確かに美味しかったし、人気なのも納得の味だ。


他にも色々買って来たと言うので、みんなで芝生の片隅に設置されたベンチまで移動する。

テーブルまであるから、みんなでゆっくり食べるのに良い場所だ。


「えっと、ほら!これとこれと……。

あ、これも食べてみてください!

……って、私がすすめちゃってますけど、全部買ってくださったのはカレン様なんですけど」


串焼きの他にも、クレープのような甘味や芋を焼いたようなものなど、様々な屋台の食べ物がテーブルの上に並べられていく。


「ごめんね、カレン。後できちんと払うから」


「いえいえ。このくらい大したことないんで気にしないでください」


さすがにこの量の支払いを全てさせてしまったのは申しわけなく思えてそう伝えたんだけど、カレンは何でもないというように笑顔で首を振る。


まぁ、たしかに近衛は給金も良いから屋台の食べ物くらい大した金額ではないのはそうなんだろうけど、私は一応カレンの上司だしね。

今度なんかしらの形できちんとお返しをさせてもらおう。


「カレン様、ありがたく頂きますね」


「ありがとうございます!いただきます!」


みんなも口々にお礼を言いながら美味しそうに食べている。


「カレン卿……お強いだけでなく慈悲深くもあられるとは。

これぞ目指すべき騎士の姿……」


ナタリーだけはなんか変な方向に感動している気もするけど。

うん、まぁ、本人がそれで良いなら良いのかな。



お昼ご飯も兼ねた屋台での買い食いを終え、腹ごなしも兼ねて花壇を見ながらみんなでのんびりと遊歩道を散歩する。


「わぁ!このお花とっても綺麗!」


「まぁ、本当に」


小さな青い花が咲いた一角で、エミリーちゃん達が足を止めたのでそれを一緒になって眺めていた時だった。


「ヤマムラ部隊長。そのままお聞きください」


たまたますれ違っただけに見えた通行人風の男性から、突然声をかけられる。

この声は……『影』の人?


「右斜め後方。少し離れたところからこちらを窺っている人影があります」


え?まさか不審者?嫌な気配とかは全然感じなかったんだけどな。


「不審者ではありませんのでご安心を。困ったお相手であることは確かですが」


ふむ。それなら良いんだけど。

そう思いつつ、振り向かないように視線だけをそちらへと向けて……。


……は?


屋台の陰に隠れるようにしてこちらを熱心に見ている、あまりにも見慣れた、でも本来なら絶対ここに居るはずのない人の姿に、私の思考は軽く停止した。

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