ナターニャ先生の正体
「へぇ?私に?」
どこまでも楽しそうにしているナターニャ先生の言葉に頷く。
「まぁいいさ。可愛い教え子が知りたいって言うんなら答えてやるよ。
どうせ本命はそっちだろ?
お前のことだ。
わざわざ護衛のことを頼みになんて来なくても、殿下が街歩きに出る以上は私も近くで見ていることになるのもわかってるんだろ?」
「さすがにバレましたか」
まぁ、そりゃそうか。
ナターニャ先生がエフィーリア様の護衛もしていることに気が付いているのに、そのことに気が付かないはずがないもんね。
「で?何が聞きたい?」
「そうですねぇ」
聞きたいことはたくさんあるんだけど、やっぱりこれは絶対に聞いておくべきだよね。
「普段のあの話し方。なんですかあれ」
いや、重要なことではないのはわかってるんだけどある意味重要と言うか。
だって気になるじゃん。
「あぁ、あれは、だな……」
ナターニャ先生が気まずそうな表情をする。
なんだろう?何かとんでもない秘密でもあるんだろうか?
「ほら、私ってこんな喋り方だろ?
これまでならそれで何とかなってたんだが……。
さすがに学園の教師をやる以上は、まずは話し方を何とかしろってマリアさん……あぁ、学園長な。
あの人に言われたんだ。
それで、丁寧に話してみようとすると、あんな風になるんだよ」
「えぇ……」
そんなバカな。
私だって褒められた話し方ではないのはわかってるけど、それでもああはならないのに。
私が内心呆れているのに気が付いたのか、ナターニャ先生が少しだけムッとした顔をする。
「お前な、そんなリアクションしてられるのもここだけだぞ。
いいか、これだけは覚えておけ。
マリアさんだけは絶対に怒らせるな。
あの人は本気でやばいから」
あの学園長が?
きちんと話したのは数回だけだけど、終始穏やかな雰囲気の人だったけどな。
そうは思うんだけど、ナターニャ先生の顔は真剣そのもので嘘を言っているようには全く見えない。
「一応覚えておきます。
それで、先生って結局のところ何者なんですか?
エフィーリア様は王族付きの魔術士だって言ってましたけど」
そう、一番気になるのはこれなのよ。
エフィーリア様は他にも何か知ってる雰囲気だったしね。
「まぁ、ある意味王族付きで間違いではないな。
魔術士団に一応は所属してるから」
あぁ、なるほど。
魔術士団も近衛騎士団もそれぞれに団長はいるけど、その最高指揮官は陛下だもんね。
それに、主任務は王族を守ることだから確かに王族付きって表現は間違いではないか。
「じゃあ、改めて自己紹介をしておこう」
懐から魔術士団の団章を取り出すナターニャ先生。
あれ?この団章って……?
「王室魔術士団、副団長のナターニャ・シルキーだ。
よろしくな」
うん、予想以上の大物だったわ。




