ナターニャ先生
「ナターニャ先生」
学園に戻ってすぐ、廊下を歩いている探し人の姿を見つけ、声をかける。
普段学園を歩いている時は会うことなんて全くないのに、こうして用があって探すとあっさりと見つかるとかね。
何ていうか色々と思うところはあるけど、たぶんこの人には私では絶対敵わないから気にしないでおこう。
「あらぁ~?サキさんから声をかけてくれるなんてぇ~、珍しいですねぇ~」
「周りには誰もいないですから、普通に話してくれて大丈夫ですよ」
絶対わかっててやってるんだろうけどね。
案の定、私の言葉にニヤッと笑うと、ついて来いとばかりに顎で廊下の先を示す。
「まぁ、適当に座りな」
ナターニャ先生に案内されて来たのは、何かの研究室だろうか。
様々な書籍や書類なんかが乱雑に積まれている。
その中で、何とか埋もれずにいるソファに腰をかける。
「可愛い教え子に茶の一杯でも出してやりたいところなんだが……」
そう言いながらあちこちをガサゴソと漁っている。
何となく、普段の生活ぶりが窺える光景だ。
「別にいいですよ。探すだけで日が暮れそうですし」
実際、放課後にみんなで集まっていた後に来ているから、もうそれなりの時間だ。
あまり長居するつもりはない。
「そうか?まぁ、次回までには見つけておくから」
「それはありがとうございます。期待しないでおきますね」
軽口に軽口で返す私に、肩を竦めて見せると先生もソファに座る。
「で?今日はどうした?」
「エフィーリア様が街歩きに行きたいらしいんですよ。
で、護衛手伝ってもらえないかなと思って」
「なんで私にその話を持って来た?
お前の部下とか、他にも適任はいるだろ?」
うん、そう言われるのは予想の範囲内だ。
あくまでも先生は学園の教師だもんね。
「でも、先生も護衛役の一人ですよね?
さすがに違うって返答は信じませんよ」
これまでのことを考えてみても、絶対そうだし。
あと、たぶんついでに私が暴れすぎないようにっていう監視の役目もしてるはず。
「まぁ、そうなんだけどな」
隠すつもりはないらしく、先生もあっさりと認める。
「そもそも、私が街歩きに詳しく見えるか?」
「いえ、全然」
この人、絶対私と同類だ。
つまり出不精。またの名を引きこもり。
街歩きなんて、絶対にまともにした事ないと思う。
先生も言っていたし、私も最初に思い付いたのはうちの隊員を呼ぶことだ。
でも、あえてそうしないで先生のところへと来た。
「それがわかってるのに私のところへ来た理由は?」
どこか楽しそうに話の続きを促す先生に、私も正直に答える。
「ナターニャ先生に興味があって。
どんな人なのかもっと知りたいなぁと思ったんですよ」
だって、この人色々と謎すぎる。
めっちゃ気になるじゃん。




