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必滅の魔女  作者: 坂井 ユキ
第二部 魔女と学園
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薬草採取 3

何となく気まずくてエフィーリア様の視線から逃れるように目を逸らす。

そして目を向けた先にいたのはニーナちゃん。


周囲にまだ生えているヤルネ草が気になるのか、しきりにそちらへと視線を向けている。


「ニーナちゃん。ヤルネ草が欲しかったら採取してもいいけど、必要な分だけね。

全部は採ったらダメだよ?」


「え!?あ、いや、その……」


私に見られてるとは思ってなかったのか、ビクッと肩を震わせながらこちらを振り向くが、その目は泳いでいる。

あぁ、これは全部採っちゃおうとか考えてたな?

確かに薬屋に持って行って売ればちょっとしたお小遣い稼ぎにはなるからね。


「この森は王都からも近いし、薬草を売って生計を立ててる人もいるかもでしょ?

それに、いくらヤルネ草がよく見られる薬草だからって、乱獲はダメなんだよ」


「はいぃ……」


あ、思い切りしょんぼりしちゃった。

別に怒るつもりはないんだけどな。


「それは生態系のバランスということですか?」


どうやってフォローしようかと悩み始めたところで、エフィーリア様が助け舟を出してくれた。

ここはありがたくその話に乗らせてもらおう。


「ええ、そうです」


「えっと……その、せいたいけいのばらんす?と言うのは?」


耳慣れない言葉だったらしく、ニーナちゃんがキョトンとしている。

エミリーちゃんも同じような反応をしているから、まだ一部の人にしか浸透してない考えみたい。

エフィーリア様は王族だから知ってたのかな。


「わたくしもそこまで詳しいわけではないのですが……。

簡単に言うと、どんな動物であれ植物であれ、絶妙なバランスの上で生きているということです。

一つの動植物が乱獲で大きく数を減らしたり、絶滅したりしてしまうと、それは他の動植物にまで影響が及ぶのです。

植物がなくなれば、それを食べる草食動物が減り、そうなるとそれらの動物を餌にしている肉食動物も減ってしまうと」


エフィーリア様の言葉にうんうんと頷く私と、想像以上に話のスケールが広がったことにぽかんとしているニーナちゃん達。


「わたくしも初めて聞いた時は信じられなかったのですが、実際にサキ達の世界で起きていたことなのですよね?」


その言葉に頷いて同意を示す。

まだまだこの世界では広く知られてはいないけど、かつてこの世界に『流れ人』としてやって来た学者さんか何かが伝えたんだっけ。


「まぁ、いきなり生態系のバランスって言っても難しいのはわかるよ。

とりあえず、薬草採取で生活してる人が困っちゃうから残しておくっていう認識でいいから」


そうやって生きている人達はどのくらいまでなら採取しても次回以降に問題がないかきちんと把握してるしね。

ここもよく見てみると、過去に採取した形跡があるし。


「わかりました、気を付けます」


真剣な顔をして頷いたニーナちゃんだけど、さりげなくいくつか採取はしていた。

うん、たくましくてなによりだ。

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