いざ出発!
「装備は大丈夫そうですか?」
去って行くナターニャ先生を見送っていると、エミリーちゃんが話しかけてきた。
その後方では、エフィーリア様とニーナちゃんが地図を見ながら楽しそうに話している。
「うん、問題はなさそうだよ」
これだけ揃ってれば、初心者でも何とかなりそうなくらいには揃えてくれてある。
実際の野営混じりの行軍だと、こうはいかなかったりするからね、かなりの充実ぶりだ。
「すみません、確認作業全部お任せしちゃって。
私だと見てもさっぱりわからなくて」
「いいよいいよ。私は仕事柄慣れてるだけだから」
申し訳なさそうにしているエミリーちゃんに、ひらひらと手を振って答える。
ここで笑顔でも出せれば良いんだろうけど、表情筋が動かないから仕方ない。
「さて、私らもそろそろ行こうか。
エフィーリア様達に声掛けてもらえる?」
「はいっ」
元気良く答えてエフィーリア様達の元へと向かうエミリーちゃん。
周りを見ても、ほとんどのグループが出発している。
空に目を向ければ、天気は見事な快晴で絶好の野営日和り。
これなら雨に降られる心配もない。
雨の中の野営は最悪だから……。
「サキ、確認作業ありがとうございました」
「あのっ、ありがとうございますっ」
「いえいえ、お気になさらず」
エフィーリア様達もこちらへと来て、全員集合。
「すみません、私にも地図見せてもらえますか?」
とりあえず、出発前にチェックポイントの場所と課題の採取物が何かの確認はしておかないとね。
えーっと、チェックポイントがあっちで、採取は……あぁ、あれね。お、川まであるのね。
よし、確認完了。
「じゃあ、行きますよ。
一応私が先頭で行くんで、はぐれないように着いてきてくださいね」
地図を返すと、みんなに声を掛けてゆっくりめのペースで歩き始める。
実技の授業とかで多少は体を動かしているといっても、あくまでも多少だ。
普段の行軍ペースで歩いたりしたら、すぐにみんなバテちゃうからね。そのくらいは配慮しますよ。
「サキ?少しよろしいですか?」
薬草などがないかを確認しながら歩き始めて少しすると、後ろからエフィーリア様に呼ばれた。
「はい?どうかしました?」
もしかして、もう疲れちゃったかな?
普段はまず持つことはないだろう量の荷物もあるし。
そうそう。野営の装備とかの荷物は四人で均等に分け合って持ってるんだよね。
ここは私が多く持つべきかと思ったけど、みんな自分達も持つって言って聞かなかった。
だから、やっぱりきつかったのかなと思ったんだけど、見た感じ三人ともまだまだ元気そう。
まぁ、まだ数分しか歩いてないし、さすがに疲れてはいないか。
「いえ、何かあったわけではないのですが……。
その、サキはコンパスは使わなくても方角がわかるのですか?
少しも迷いなく進んでいるように見えるのですが……」
そう言うエフィーリア様の手には、コンパスが握られている。
その横で、エミリーちゃんとニーナちゃんも不思議そうな顔をしている。
あぁ、そう言うことね。
「大丈夫ですよ、方角はわかってるので」
そう答えながら空を指さす。
その先には、森の木々の隙間から顔を覗かせる太陽の姿。
私の指に釣られるように三人も空を見上げながら首を傾げているのが少し面白い。
「太陽の位置です。
それを目印にしていれば、方角はわかるし迷うこともないですよ」
「太陽の位置でそのようなことがわかるのですね」
「ええ。ここくらいなら大丈夫ですけど、本当に深い森の中だとコンパスが役に立たないこともありますので」
まぁ、そのくらい深い森だと見上げただけじゃ太陽が見えなかったりするから、木に登ったりもするんだけどね。主にマークあたりが。




