エミリーちゃんをお誘い
「エフィーリア様。
私は平民の特待生のエミリーちゃんに声掛けてみようと思うんですが、良いですか?」
教室の片隅で、クラスメイトの子と何やら楽しそうに話しているエミリーちゃんに視線だけ向けながら言うと、エフィーリア様もそちらに目を向ける。
「エミリーさんと言うと……。先日の?」
私が出した名前に、ハッとしたように反応する。
どうやら、貴族から虐められていた被害者としてエミリーちゃんのことは覚えていたらしい。
「そうです。
正直言うと、他の平民の子達とは話したことないんで……」
だって、わざわざエフィーリア様には言わないけど、みんな私のこと怖がってるんだもん。
任務でも平民には何かしたことはないんだけどなぁ。解せぬ。
「なるほど……。ですがそれはわたくしも同じです。
それでは、一緒に行きましょうか」
いや、エフィーリア様に平民の子が話しかけられないのは私に話しかけられないのとは理由が違うでしょ。
それに、そんな私とエフィーリア様が一緒に行ったりしたらエミリーちゃんが困るから……ってあぁ、行ってしまった。
安定の無表情ながらも内心でツッコミを入れまくっている私には気付くことなくエミリーちゃんの元へと近付いて行くエフィーリア様。
笑顔でお喋りを楽しんでいたエミリーちゃんだけど、その様子に気が付いて露骨に顔が引き攣っている。
「ごきげんよう、エミリーさん」
「ひっ!?ひゃ、ひゃい!エフィーリア様、こ、こんちにはっ!」
あぁ、ほら。
混乱しすぎて軽くパニックになっちゃってるよ。
「実は、わたくし達サバイバル合宿で一緒にグループを作ってくださる方を探しておりまして。
エミリーさんはもう決めてしまいましたか?」
「へっ!?いえ、まだ全員は決まってないですけど……」
ちらりと話していたクラスメイトちゃんに視線を向けながら答えるエミリーちゃん。
あの様子だと、彼女と組むつもりだったのかな?
そう言えば、私は話したことのない子だけど、よく二人で一緒にいるのを見るような気がする。
「そんな緊張しないで大丈夫だよ、エミリーちゃん。
エフィーリア様は結構気さくな方だし」
本人を前にして言うのはどうなのかと思わないではないけど、今はまずエミリーちゃんの緊張を解してあげないと話が進まないからね。
エフィーリア様も、私の発言なんか全然気にならない様子でにこにこしてるし。
「あ、サキさん……。
でも、私なんかで本当にいいんでしょうか?
その、平民ですし……」
話したことのある私を見て多少は安心してくれたのか、エミリーちゃんの表情が少しだけ柔らかくなる。
ほら、やっぱり怖くないんだよ、私は。わかる子にはわかるんだ。




