クラスメイトとの会話
「うん、やっぱり薬草学の講義は面白い」
「あら、サキは薬草学に興味があるのですか?」
講義を終えて教室から立ち去る教師を眺めながら思わず漏れた呟きに、エフィーリア様が反応した。
無意識だったけど、結構大きな声が出てたのかも。
「そうですね。仕事柄少しは薬草の知識はありましたけど、きちんと学問として学んだことは無かったので。
今後の任務に色々と役立ちそうです」
うちの部隊には治癒魔法が使えるメンバーがいないからね。
もちろん、誰にも怪我なんてさせるつもりはないけど、万が一のこともある。
そんな時のために基礎的なことは隊員達からも教わってたけど、せっかく学園にいるのもあるし、これはしっかりと学んでおきたい。
「お兄様は、恐らく経営学を学んで欲しいと思ってると思いますが……」
「いや、それはちょっと無理です」
悪戯っぽく微笑みながら言うエフィーリア様に、つい即答で拒否してしまう。
ちなみに、今ここで言ってる経営学っていうのは、主に領地経営について学ぶ講義のことね。
私を領地持ちの貴族にしたくてしょうがないらしい陛下は確かにそう思ってそうだけど。
絶対に嫌だから、とことん逃げてやる。
「失礼。少し話が聞こえてしまいまして。
サキ殿は薬草学に興味がおありなのですか?」
お、いいねえ。
話してるところに気軽に誰かが声をかけてきて加わる感じ。
めっちゃ学園っぽい。
社交界じゃこうはいかないもんねぇ。
…………ん?
待って、今私が話し掛けられた?
これまでクラスメイトの誰にも話し掛けられなかった私が!?
少し驚きながらそちらに目を向けると、そこに居たのは長い赤い髪を後ろで一つに束ねた茶色の瞳の令嬢。
うん、声で女の子なのはわかってたけど、話し方がちょっとそこらの令嬢とは違う感じの子だな。
「えーっと……バルサルさん……だっけ?」
合ってるよね?
未だにクラスメイトの名前自信ないんだよなぁ。
「ええ。ナタリー・バルサルと申します。
どうかお見知り置きを。
エフィーリア様におかれましてもご機嫌麗しゅう」
そう言って騎士の礼をとるバルサル嬢に、エフィーリア様もにこやかに答えている。
「まぁ、バルサルさん。ご丁寧にありがとうございます」
あれ?待って。今この子騎士の礼をしたよね。
騎士…………バルサル…………。
どこかで聞いた記憶があるぞ。
わりと身近な名前だった気がする。
……あっ!思い出した!
「もしかして、ガイエス団長の?」
「はい。サキ殿には父がいつもお世話になっております」
やっぱりかー!
うわぁ、ガイエス団長の娘さんだったのかこの子。
良かった、名前覚えてて。
忘れてたなんてガイエス団長に知られたら、どんだけそれで弄られたか……。
危なかった。
しかし、ガイエス団長に娘さんがいるのは聞いていたけど、まさか学園で同じクラスになるとは予想してなかったな。




