ミリア嬢の想い
「ええ、大丈夫ですよカリナ様。
どうかご安心ください」
「エフィーリア様の言う通りですよ。
以前のことはわからないですけど、今は二人がすごく仲の良い姉妹なのは見てわかりますし、ミリア嬢が良い人なのもわかってるつもりです」
正直、以前のミリア嬢がどんな人だったかなんてどうでもいいと思ってる。
少なくとも、今はカリナ嬢にとって良い姉なんだろうし、私が学園で見た彼女は身分差とか気にしてない様子だったし、優しい人だ。
それでいいと思う。
うちの屋敷で働いている使用人の子達だって、レイシアを筆頭にそれぞれが過去には色々あったけど、今はみんな頑張ってるしね。
大切なのは今だよ今。
「さぁ、ミリア様もどうかそのような顔はなさらずに。ね?」
「はい、ありがとうございます」
エフィーリア様の言葉に、ミリア嬢は俯いていた顔を上げる。
「カリナもこのように言ってくれていますし、これからはたくさん迷惑をかけてしまった家のためにも精進していきたいと思っています。
今回、留学を決めたのもその一環なのです」
「そうなのですね。
それは素晴らしいと思いますわ」
本当にね。エフィーリア様の言う通りだ。
過去を後悔することはあっても、それをきっかけにして行動を起こすのって言うほど簡単なことじゃないもんね。
機会があれば、うちの屋敷の子達にも会わせてみたいな。
みんなの将来に向けて、何かしら参考になる話が聞けそう。
もう少し親しくなれれば頼んでみるのもいいかもしれない。
「ですが、だからこそ黙って見ていられなかったのです」
そう口にするミリア嬢の瞳には、強い意志を感じる。
「これはフォーリア王国でもあった事なのですが、この学園でも生徒間の身分差による差別が起きている現場を目撃しました」
それってこの前のエミリーちゃんの件だよね。
今の話聞いてた感じでも、放っておけなかったんだろうなってのがよくわかる。
「それに関しましては、我が国の恥を晒すようで申し訳なく思っております。
聞けば、ミリア様とカリナ様は当該生徒に寄り添ってくださっていたとか。
遅くなってしまい大変申し訳ありませんが、改めまして王族としてお礼とお詫びを申し上げます」
「もったいないお言葉でございます。
それでなのですが、エフィーリア殿下。
もし、わたくし達で何かお力になれることがあるのならば、協力させてはいただけないでしょうか?」
この前もそう言ってくれてたし、心からそう思ってくれてるんだとは思うけど……。
やっぱりなぁ。
せっかく留学までして来てるんだから、勉強に集中させてあげたいと思っちゃうんだよね。
エフィーリア様も同じみたいで、少し困ったような顔をしている。




