時間がかかろうとも、少しずつ
今回で100話目の投稿になります!
いつもありがとうございます!
「サキ、どう思いますか?」
学園長室を出て、寮へと向かう道すがら。
エフィーリア様が呟くように問いかけて来た。
「まぁ、身分差による虐めはなくならないでしょうね。
多少減るとは思いますけど」
何のことを聞かれているのかは確認するまでもなく明確だったので、私も思ってることを素直に答える。
「えぇ、わたくしもそのように思います」
たぶん学園長も同じように思っているはずだ。
学園生による自治組織的なものによる見回り。
それをしたくらいで、長年この学園内で日常的に行われていた問題が解決するなら、誰も苦労なんてしない。
最初からそんなことはわかっていた。
「ですが、やる事にこそ意味があるとも思っています」
「そうですね。そう思います」
だからこそ、こうして話し合ったんだし。
でも、簡単には解決しない問題でも、こうして学園側や高い身分にある人。
今回だとエフィーリア様のような立場にある人が、この問題に目を向けているという姿勢を示すことが何よりも大切だと思う。
そうすることで、現在平民を虐めている貴族への牽制にもなるし、エフィーリア様の行動に影響を受けたりで、少しずつでも全体の意識改革に繋がるかもしれない。
逆に、平民側からすれば、学園や王族はこの虐めを許していないことを示すことになるし、何より自分達は見捨てられていないという意識を持ってもらえる。
そうすれば、現在平民の生徒達が抱えているだろう不満も多少は抑えられるはずだ。
「時間はかかると思いますけど、少しずつですね」
「えぇ、そうですね。皆で頑張りましょう」
さて、今日はこの後どうしようかな。
エフィーリア様がもう寮へ戻るなら、王城へ行ってこようか。
いきなりだから陛下には会えるかわかんないけど、うちの隊員達はいるだろうから今日の話をしておきたいし。
そう思って声をかけようとしたら、エフィーリア様が足を止めて通路の向こう側をじっと見ている。
何を見ているのかと思ってそちらへと視線を向けてみれば、そこには見覚えのある人影があった。
通路の中ほど、ちょうど陽の光が差し込み、陽だまりのようになっている場所で何やら楽しそうに立ち話をしている二人。
フォーリア王国からの留学生であるラシール姉妹だ。
この前会った時も二人一緒にいたし、今も笑顔で話してるし仲が良い姉妹みたいだね。
「サキ、あの方達はもしかして……?」
「はい、フォーリア王国のラシール姉妹ですね」
「やはりそうでしたか。
せっかくですし、ご挨拶していきましょう」
そう言って二人の元へ歩いて行くエフィーリア様について行くと、姉のミリア嬢が私達に気が付いてこちらに体を向けた。
その様子を見て、妹のカリナ嬢もこちらを向く。




