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鳥籠の水槽

作者: yu-na_Manaka氏

緩いファンタジー系なお伽噺

誤字脱字と共存してきた為、恐らく大変読み辛いです。

ご都合主義ご都合展開なので突っ込みは野暮というもの…頭を空っぽにしてお読み下さい。

 その魔法使いの部屋には鳥籠の様な水槽が飾ってありました。

魔法使いの弟子が師匠である魔法使いに聞いてみました。

「この不思議な水槽はなんですか?」

「それは海の鳥籠だ」

「海?中には魚が一匹泳いでいるだけにしか見えませんよ」

弟子の言う通り、その不思議な鳥籠の様な水槽には一匹の熱帯魚がひらひらと優雅に泳いでいるだけでした。

「お前はそれでも私の弟子か?見たままの事をしか信じられないようでは、まだまだ見習いを卒業することもできぬぞ?」

弟子はその言葉に首を捻るだけでした。

ある日魔法使いが出かけてしまい、留守な時がありました。その間弟子は館の中を掃除して回っておりましたが、ちょっとした不注意であの鳥籠の様な水槽を割ってしまったのです。

「しまった!」

そう思った時には床に落ちてガラスが割れて、水が出てきてしまいました。

そのとたん大きな物体が床に落ちた水槽から飛び出してきました、弟子は吃驚して、慌てて頭を抱えてしゃがみこむので精一杯でした。

それはあっという間に窓から外へと飛び出して行ってしまいました。

弟子は如何したものかと困りましたが、おとなしく魔法使いが帰って来るのを待つ事にしました。

 魔法使いが帰ってきて、弟子はあの水槽を割ってしまい、中から何かが飛び出して行ってしまった事を全て正直に話しました。

「なんと、飛び出して行ってしまったとは、そんなに元気になっていたのか」

「どういうことですか?」

「あれはメロウだ、力を失い、弱っていた所を私が拾ってあの中へ入れておいたのだ。そうか、もう元気になっていたのだな」

「閉じ込めていたのではなかったんですか?」

「いや、だがずっと何も言わないので、今だ弱ったままなのかと思っていた」

あの水槽は弟子が来る以前から置いてあったので、もうずっと長い間魔法使いと共にこの館で過ごしていたのでした。

一人で暮らしている魔法使いを慰めるかのように、メロウは毎晩静かに歌ってくれていたそうです。

「元気になっていたのなら、もうこの籠も必要ないな」

そう言って割れてしまった鳥籠の水槽を仕舞ってしまいました。

 それから数日後、空に月が昇り始めた頃に館へ一人の美しい娘が訪れたのでした。

「申し訳ないのですが、道に迷ってしまいましたので、一晩泊めていただけませんでしょうか?お金は持っておりませんが何でもいたしますので」

娘に同情した弟子は、館の主である師匠にお伺いを立ててみました。

「女性一人夜この様な場所に外に出て回るのは危険です、一晩宿を貸しても良いのではないでしょうか?」

「…まったくもってお前は御人好しだな、誰に似たのやら…。よく考えてごらん、この森にわざわざ来るような物好きはお前の様な者か、さもなければ厄介事を持ち込みに来る者くらいだ。この森は町や街道からはとても離れているのだから、その娘は恐らく人間ではあるまい」

すると弟子は師匠に「薄情者!!」と言い放ち、癇癪をおこしてしまいました、普段従順でめったに師匠に逆らったりしない弟子でしたが、一度怒ったりヘソを曲げると中々機嫌が直らないので師匠はこの点だけは手を焼いておりました。

弟子の様子に師匠は渋々娘を館へ入れるのを許す事になってしまいましたが、館へ入れる前に娘にこう言ったのでした。

「娘さん、あんたは人間ではないね?悪い事は言わん、自分の住む場所へ帰りなさい。悪事を働けば私は相手が誰であっても容赦しないからね」

「…本当に申し訳ありません、ですがわたくしはもう戻れないのです。住んでいた場所から離れていた期間が長すぎたのです、海が私を受け入れてくれないのです」

そう言って娘はシクシクと涙を流すのでした、その涙は床に落ちる前になんと虹色の真珠へ変わったのです。

「そうか、お前はあのメロウか…道理で海の気配が感じられた訳だ。そうか、そうか、海に帰れなくなってしまったか、それは私の責任だな」

「いいえ!命を救ってくださった事は大変感謝いたしておりますし、けっして怨んでもおりません。ただ海に帰れないことだけは悲しいですが」

「なら、好きなだけ家に居るといい、弟子も喜ぶだろうしな」

「…わたくしはどちらかと言うと、貴方に喜んでいただきたいのですが」

「ははっ、こんな年寄りよりも、元気の有り余ってる若い者の方の相手をしてもらおうかね。それにあの子はまだまだ若輩者だが、私が唯一可愛がっている孫の様な存在だからね。けど、今の事はあの子には内緒にしておいてもらおう。孫の様だなんて言っていたのを知られたら、またヘソを曲げてしまうからね」

「はい、わかりましたわ」

微笑んで海の娘は快諾したのでした、その日から館には始終美しい歌声が優しく響き渡る様になりました。 その後魔法使いの弟子と海の娘はやがて恋仲となり、結婚して夫婦となりました。もちろん娘が人間ではない事を知った上で弟子は一緒になったのです。この世界では異種族との婚姻は特別禁忌とされてはおらず、特に魔法を扱う者達は強い力を得るために異種族との婚姻も盛んでした。娘は海の眷属でしたので海の神様に「丘に生きる者として」夫と末永く暮らしていけるようにと、異形の子供が生まれないように祝福をいただき、皆で仲良く幸せに暮らしたそうです。

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