表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/49

辞書で大馬鹿者と調べたら、きっと僕の名前が書いてある

「島袋主任、僕とセックスして下さい!」 


「は?」


「僕とセックスして下さい!」


「……うんうん、だ。か。ら。は?」


「僕とセックスして下さい!」 


「いや、聞こえています。聞き取れない意味合いでの『は?』じゃない」

 

 ああ、やはり僕は、気がふれちゃったのだ。


「これから一緒にホテルに行って、僕とセックスしてください! 僕を主任の数あるセックスフレンドの一員に加えて下さい!」


 自宅で母が首を吊って死んでいるのです。そりゃあ、気も動転しますよ。そりゃあ、気もふれるってものですよ。


「僕は主任に無茶苦茶に弄ばれたい! 是非とも顔面を足で踏ん付けて頂きたい!」


 な、な、な、何たる大馬鹿者。今、辞書で大馬鹿者と調べたら、きっと僕の名前が書いてある。間違いない。自分へ落胆の溜息が深く濃く長く、唾液で湿った布マスクを生ぬるく温めます。


「あなた、ほら、マスクから鼻が出ているわ」


 気まずい空気を打ち破るように、主任は僕が布マスクを正しく装着していないことを、おもむろに注意しました。


「それから、その落ち武者カット、いつまで続けるつもりよ。早く丸坊主にして来いって、何度言ったら分かるのよ」


 主任はあらぬ話題を吐き捨てると、ぷいっと僕に背を向け、何事もなかったようにタクシー乗り場に向け歩き出しました。


 ああ終わった。明日辞表を提出しよう。


 もう主任の顔を正視出来ない。


 もうこの会社にはいられない。

 

 その時です。


 僕とタクシーの離隔のちょうど中間あたりで立ち止まった主任が、僕においでおいでと手招きをしているではありませんか。


 丘の上に建つ総合病院の正面入口辺りの構造物一帯に、主任の大声が反響します。


「ほらー、何をぼさっと突っ立てるいのよ! タクシー取られちゃうじゃない! 行くのでしょう、ホテル!」



「え」



「早くいらっしゃい! 私とセックスするのでしょう!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ