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なあんだ、主任は入院をしていたのか

『おはよう。本メール確認次第、大至急下記の病院に来い』


 なあんだ、主任は入院をしていたのか。


 一体何の病気だろう。何故僕を呼び出すのだろう。


 勤務中ではありましたが、主任がいなければせいぜい倉庫の掃除ぐらいしか出来る業務もありませんし、表通りで勇気を振り絞ってタクシーに手を上げ、僕は主任の指示した病院に向かったのでした。

 

 住宅街から離れた丘の上に建つ巨大な病院に着きました。


 総合受付で、島袋珠の見舞いの者です、と主任がいる病室を確認します。


 受付の女性に、新型コロナウイルスの感染予防対策として患者との不要不急の面会は原則禁止です、と告げられます。


 いや、あのね、帰れっつーなら帰りますけどね、恐らくとても急な要件で呼ばれていると思うのですけど、一応確認して頂けますでしょうか、と受付の女性に詰め寄ります。


 しばらく待たされましたが、無事確認が取れたようで、僕は主任のいる病棟に案内されました。


 病棟の窓口で再度要件を伝えると、僕は主任の病室ではなく、窓口の隣にある小部屋に案内されました。


 その部屋は一見して診察室ではなさそう。ドクターや看護師たちの休憩所でもない。小さな事務机にパソコンが一台だけ置かれ、あとは会議机が二台とパイプ椅子五脚が無造作に置かれています。


 僕が、その一脚に腰をかけて、室内をきょろきょろしていると、奥の扉から主任の主治医と思われる白髪の医者が現れました。


 その医者は椅子に座るなり、手にしたボールペンをカチャカチャ鳴らし、せわしそうに話しました。


 医者の言ったことを要約すると、


 患者に検査の結果を告知しようとしたのだが、本人が頑なにそれを聞きたがらない。


 では近い身内のどなたかを呼んで下さいと頼んだが、私に身内などいない、の一点張りで話にならない。


 ところが昨晩、親しい知人なら呼べる、明日の朝ここへ来た者に私の病状を全て告げて下さい、と突然おっしゃった。


 そして今朝、僕がここへやって来た。とのこと。



 それでは、単刀直入に言います。



 そうして、医者は、実に事務的に、僕にこう告げたのです。



 患者は大腸癌。ステージ4。


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