表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/49

笑うなら目で笑いなさい、目で

「いやあ、圧巻でした。諸刃の剣感は否めませんが、それにしても仰天の交渉術。僕はぶったまげました。おったまげました」


 駐車場へと戻り、車に乗かける主任に、僕は満面の笑みで先程の功績を称えました。


 その僕を主任がじっと見詰めています。


 じっと見詰められるものですから、僕も主任をじっと見詰め返しています。


 僕たちはじっと見つめ合っています。


「……何? 何か文句ある?」


「え?」


「文句があるならさっさと言って。私忙しいの」


「文句? いやいや、あれれ、僕のこの気持ち、伝わっていませんか?」


「ああ、なるほど、あなた、今、笑顔なのね。


 あらあら、自分がマスクをしていること忘れては駄目よ。


 あなたの作り笑い、目が全然笑っていませんから。


 あなた、目が完全に死んでいますから。


 このコロナ禍では口元のスマイルに何の効力もないわよ。


 笑うなら目で笑いなさい、目で。


 ちなみにこれからの営業は、相手の表情から気持ちを読み取って次の一手を打つなんてことは出来ないし、

 

 もの言わずとも喜怒哀楽の表情のみで相手にこちらの心情を察してもらうなんてことも出来ません。


 みーんなマスクをしていますから。あしからず」


 主任の訓示を大人しく聞いていたら、ハラワタがトロ火で沸々と煮込まれていくようです。


 鬱憤晴らしに、マスクの裏で、思いっきりベーっと舌を出してやりました。


 なるほどマスクの内側の表情は他人には分からないのだな、と痛感したのでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ