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前日と洋服

今日は9月22日水曜日、花さんとのゲームセンターデート前日である。日曜日に潤と会ってからは花さんとのラインも、サトミさんとの会話も一度もない。まあ元の生活に戻った、という感じだ。


午前中の授業が終わり、いつも通り潤と食堂へと歩いていると、潤が僕に質問をしてきた。


「お前明日どんな服装でデート行くの?」

「え、全然考えてなかった」


潤はおいおいマジかよとでも言いたそうにこちらをみてきた。


「じゃあいつものシワクチャTシャツで行くつもりか?嫌われるぞ」

「シワクチャとか言わないでよ。でも確かにあれじゃダメだよね、どうしよう」

「なんかいい服持ってないの?」

「うーん、持ってない」

「そうか、じゃあ授業終わったら買いに行けよ」

「あ、うん。でも服なんて1人で買ったことないしなー。結局ダサい服になっちゃいそうだなー」

「まあ確かにセンスなさそうだもんな」

「ぐっ、そんな直球で言わないでよ」

「いやいや冗談だって。とにかくシワクチャTシャツでは行かないほうがいいぞ」

「そうだね、アドバイスありがとう」


確かになぁ、服かぁ。女の子とのデートなどしたこともない僕からすれば完全に盲点であった。モテ男への一歩目を踏み出すためにも授業後は服屋さんに行こうと僕は決意した。


========================================


9月22日水曜日午後4時。授業とホームルームが終わり、他のクラスメイトが一斉に教室を後にする中、僕は日直当番として教壇に登って黒板を消していた。すると、左端にいたサトミさんだけはずっと教室にいた。どうやら寝ているふりをしているようだが、机の下に両手を置き、何かを握っているのが教壇からだと丸見えであった。(あれは確実にゲームだな)と思ったが、もちろんサトミさんは寝ているふりをしているわけなので話しかけるのは遠慮しようと思い黒板を消していると、廊下で足音がしたためかサトミさんはバッとゲームを机の中に隠し、寝たふりを続けていた。そして足音が過ぎ去っていくと顔をあげ、教室を見渡した。教室にはもう既に僕とサトミさんの2人しかいない。サトミさんは机の中のゲームをそそくさとカバンの中にしまい、席を立った。教室のドアから廊下へと渡ろうとした時、


「バイバイ」


とサトミさんは僕に言ってきた。


「あ、うん。また明日ね」


少し、いやかなり予想外ではあったがなんとか平然を装い返答した。サトミさんは少し口角をあげ笑顔を見せたような気はしたが、僕の返答には何も言う事なく教室を出て行ってしまった。



1,2分後に黒板を綺麗にし終え、僕も教室を出た。今から向かうのはイオーンというものすごく大きい商業施設である。服屋さんはもちろんのこと、フードコート、ゲームセンター、シネマ、スーパーなどなど、なんでも兼ね備えている。ここに行けば流石にいい服に1枚2枚は巡り会えるだろう。


いざイオーンに到着し館内マップを見ると、色々な服屋さんがある。ファッションに疎い自分でも知っているような店から、少し高級そうな店まで本当にバラエティに富んでいる。少し感動を味わいながら片っ端からチェックすることにした。



イオーンでの服探索から1時間が経過した。もう時間は5時半を回っている。お気に入りの服の目処が大分経ち、後は最終選考だけという所まで来たので、一回フードコートで夜ごはんを食べる事にした。


石焼ビビンバを選び、フードコートの端の席で食事をしていると、近くの席で女子高生たちがわーきゃー騒ぎ始めた。心の中ではうるさいなとは思ったが、注意しにいく勇気もないのでそのままほったらかしにして石焼ビビンバに食らいついていると、さっきまでわーきゃーとしか聞こえなかった女子高生の会話が途切れ途切れ聞き取れるようになってきた。


「それでさー、まじあいつウケるんだけどー、なんか彼氏できたとか言って調子乗ってんの」

「キャハハハハハハハ、あいつと付き合うとかマジでないわー」

「どうせその彼氏も芋っしょ、きったね。マジで空気腐るわ」

「それでさー、お前の彼氏とかどうせキモいゴミだろ、って言ったら泣いて否定してくんの。マジ笑うわ」

「あーあ、アリスに楯突くとかマジないわー、お仕置きレベル上げないとねー」


女の裏って怖ッとは思ったがまあ自分には関係ないしどうでもいいやーと思い、僕は空っぽになった皿を返却口へと運んだ。ついでにその女子高生の方を見ると、着ていた制服にどこか見覚えがあったような気がしたが、どこで見たかまでは思い出すことが出来なかった。


とりあえず最終選考へと戻り、20時頃ようやく服を買い終えた。買った服はベージュのパーカーと少しダボっとしたような黒のスウェットパンツである。あまり自信はないがこういうのは大学生である姉ちゃんに後でチェックして貰えば大丈夫だろう。安心しきった僕は少しデートの先取りをしようとゲームセンターへと向かった。


イオーンのゲームセンターはかなり大きく、UFOキャッチャーコーナー、音楽コーナー、メダルゲームコーナーなどに区分されていた。なんか面白そうなゲームはないのかなーとウロウロしていると『Overlook』に似ているシューティングゲームがあった。ゲームセンターに行くと必ずといっていいほど遊ぶゲームなので、よし今日もこれをやろうと思ったが、先に1人遊んでいる人がいた。まあそこまで時間はかからないだろうし待っていようと思うと、その人はクリアできなかったのか台を叩きつけそうになっていた。(おいおい熱くなりすぎだろ)と思ったが、自分も世界大会で負けた時はそのくらい悔しかったので人のこと言えないかと思っていると、その人はそのゲームをやめ、席を立ちこちらへと向かってきた。その瞬間、信じられないことが目の前に起こったのだった。


「え、サトミさん…」

ここまで読んでくださった皆様、いつもありがとうございます!


作中で出てくるギャル、冬見聖の名前を現在フユミ『サトミ』としているのですが、かなり読みづらいかと思われますので、途中で「聖」という漢字を変えるかもしれません。ご了承願います。


ギン

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