相談と朝食
家に帰り、少し『Overlook』の特訓をしていると、僕の部屋の前をスタッスタッという足音が通りすぎていった。おそらく姉ちゃんだろうと思い、急いでドアを開けると、裸+タオル1枚、お風呂上がりの姉ちゃんが僕の目に映った。
「あら、貝おかえりなさい」
「いやいや、恥ずかしいとかないの、その格好」
「うん、家族だもん。ついでにタオルも取っちゃう?」
「いやいやいらないってそういうの。早く着替えてきてよ、後でちょっと相談したいことあるから」
「恥ずかしがらなくてもイイのにー。うん、わかった。じゃあ着替えてくるねー」
そう行って姉ちゃんは自分の部屋へと戻っていった。少しして、姉ちゃんが僕の部屋をノックする。
「貝ー、着替えてきたよー」
「ほいほい」
ドアを開けるとパジャマ姿の姉ちゃんがいた。
「それで、相談って何ー?」
「あのね、今日服買ったんだけどさ。それが似合ってるかチェックして欲しいんだけど…」
「へぇー、貝がそんなこと言うの珍しいねー、いいよ。じゃあここで着替えて」
「え、姉ちゃんもいるの」
「当たり前じゃない、服見てもらいたいんでしょー」
「あーもう、わかったよ」
そういって僕は姉ちゃんの前でズボンと制服を脱ぎ、先程買ったものを着た。ぶっちゃけ姉ちゃんにどう思われるだろうと内心ドキドキしている。
「ほら、これなんだけど…」
「へぇー、ちょっと触ってもいい?」
「え、うん、いいけど」
そう言うと姉ちゃんは僕の服を触り始めた。兄弟に体(間接的にではあるが)を触られるとなんか気持ち悪い…。
「これいくらした?」
「だいたい合わせて11000円くらいかな」
「そっかー、この生地ならもうちょっと安く買えたかもねー。でも最初のお買い物と考えれば合格だね」
「え、ホント?よかったー」
「うん。色もそこまで悪くないし、いつもtシャツばっか着てる貝がパーカー着ようとするなんてそれだけで成長だよ」
「あ、そ、そう?ありがとう」
「うん、でもなんでいきなり服なんか買い出したの?あれ?もしかして気になる子でもできたのかなー?」
「い、いやぁ、そ、そんなことない、ないよ、うん」
「あれ、図星?まあそんな年頃だよねー」
「いやいや、だから違うって」
まさか姉ちゃんは僕に既に彼女がいるとは思いもしないだろう。でもとりあえず姉ちゃんに合格をもらえてホッとした僕であった。
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「ジリリリリリリリーーーーーーージリリリリリリリーーーーーーーーーー」
午前7時のアラームがなったが、既に僕は起きていた。緊張して寝ることができなかったからだ。よいしょと腰を上げてアラームを止め、ラインを開いた。新着メッセージは特に来ていない。
既に昨日の夜のうちに花さんとラインで集合場所や時間、行くゲームセンターを決めていた。最初はイオーンのゲームセンターにしようと思ったが、万が一サトミさんとかに見られたら恥ずかしいなぁと思い、別のゲームセンターを提案した。
「おはよー」
階段を降り、朝食を作っている母に話しかける。
「おはよー、そろそろできるからちょっと待ってね」
「りょーかい」
少し経って朝ごはんが出てきた。ウインナーを頬張りながら、今日のデートの妄想をしていると、ドスドスという足音が聞こえてきた。この足音は妹の美沙だ。
「おはよ、って豚もう起きてたんだ、キモ」
「いや、何が気持ち悪いんだよ、いいじゃん別に」
「豚なんだから息もせずにずっと寝とけばいいのに」
「それは豚にも失礼だって」
「うるせーよ」
美沙はいつもの暴言の後、朝ごはんを食べ始めた。すると、スクランブルエッグにかかっていたケチャップが跳ね、制服についてしまった。
「うわっ、サイアク。なんなのまじで」
心の中では(ザマァみろ)と思ったが、流石に制服が赤く染まってしまったのはかわいそうだなと1mmほど同情した。美沙は制服についたケチャップを必死にとっている。黙ってその姿を見ていると、あることをハッと思い出した。
「その制服僕昨日見たな」
「は?どこでだよ?」
「イオーンの中。なんかフードコートでめっちゃ騒いでた」
そう、昨日フードコートで騒いでた下衆話のようなものをしていた女子高生たちの制服が美沙の制服と同じだったのだ。とすると同じ学校なのか。(頭はいいはずなのにひどいやつしかいないのかあの学校は)と僕は少し呆れた。すると美沙が口を開いた。
「あー、多分あいつらだ」
しかし、その声はかなり小さく、僕にはなんと言ってるか聞こえなかった。
「え、今なんて言った?」
「は?なんも言ってねーし、うるせーよ、芋」
「いやなんか言ってたように聞こえたけど」
「だからウッセーな、黙れよ」
そう言って美沙はかばんを取りに戻って行った。僕もほぼ同時に食べ終えたので、歯磨きのために2階へと戻り、その後荷物を持って玄関の扉を開けた。
まあ少し気になることもあったが、なんにせよ今日は花さんとの記念すべき初デートの日だ。嬉しさが体の中だけでは収まらず、鼻歌を歌いながら僕は学校へと自転車を漕ぎ始めた。




