8話「それから」最終話・ざまぁ回
パーティーを早めに終わらせ、広場で炊き出しのお手伝いをした。招待したお客様のうち何人かは炊き出しを手伝ってくれた。
慌ただしく時間が過ぎあっという間に一日が終わる。
ルード様と話をする時間が取れなかったので、後日ルード様に公爵家に来て頂いた。
本当は私が伯爵家に伺いたかったのだけど、公爵家の跡取りとなるとそうも行かない。
格下の伯爵家を訪ねるにはそれなりの理由が要ります。
ガゼボにお茶を用意し、メイドを下がらせ、二人きりで話をすることにした。
「先日はお祖父様が勝手に婚約を決めてしまって……」
「勝手じゃないよ、僕は公爵のお言葉が嬉しかった」
「それって……?」
「ビアンカの事がずっと前から好きだったんだ」
ルード様に見つめられ、頬に熱が集まり、心臓がうるさいほど音を鳴らす。
「私でいいの?」
おずおずと尋ねる。
「愛してる、君がいいんだビアンカ」
ルード様が私の手に自身の手を重ねた。
私とルード様は正式に婚約し、二年後私の卒業を待ってから結婚式を挙げた。
お祖父様はルード様を私の家庭教師にしたときから、いえ私の遊び相手として幼いルード様を公爵家に連れてきたときから、ルード様を私の結婚相手にと考えていたらしい。
学園を卒業したルード様は私の家庭教師をしながら、両親や妹の行動を観察しお祖父様に報告していたようです。
だから私の誕生日パーティーにお祖父様とルード様が同じ馬車に乗ってこられたのですね。
私が誕生日のプレゼントのことをお祖父様に相談しなくても、その前から両親と妹の廃嫡は決まっていたみたい。
結婚後、私はオイデンブルク公爵家を継ぎ、お祖父様の元でルード様と共に領地経営を学んでいます。
ルード様は物覚えがよく決断力もあって、とても頼りになります。
いつの日か私もお祖父様のような立派な公爵になって、公爵領を正しく治めていきたいです。
☆☆☆☆☆
そうそう廃嫡され小さな小屋に閉じ込められた両親はというと。
最初の頃「自分たちに非はない! ここから出してくれ!」と身勝手なことを書いてお祖父様に送っていたそうです。
毎日の食事から肉が無くなり、スープとサラダが消え、食事が硬いパンと水だけになり、三度あった食事を二度に減らされ、ようやく事態の不味さに気づいたようです。
それからは毎日真面目に反省文を書いてお祖父様に送っているみたい。
「あ奴らが反省しないようなら、強制労働所に送ろうと思っていたのに……」
お祖父様が残念そうにおっしゃっていた。
両親が心から反省し、民を思いやれる人になれればいいのですが……そうなるには長い時間がかかりそうです。
妹は修道院から何度も脱走を試み、そのたびに連れ戻され、鞭で打たれ、反省室に入れられているみたい。
反省室の半地下の部屋は日がほとんど差さず、狭くて、カビ臭くて、入り口にも窓にも鉄格子がはめられていて……牢屋に近い部屋だそうです。
「ミアが物心ついた五歳のときから、ビアンカの十六歳の誕生日までの十年間、あやつはビアンカの物を我が物顔で奪ってきた。
ミアのことは最低でも十年修道院に入れる、反省しないならもっと長い時間入れておいても構わない」
お祖父様が修道院からの報告書を読みながら独り言のように呟いていらした。
妹が修道院を出られる日は遠そうです。
私は妹が修道院で暮らし、真人間になることを少なからず期待していました。
ですが妹は修道院で生活しても変わりませんでした。このままいけば妹は死ぬまで修道院で暮らすことになるでしょう。
私が十六歳の誕生日に始めた、プレゼントを野菜や穀物で貰い民に配るという案は、善良な貴族の間で流行っています。
各家の当主の誕生日には、王都や領地の広場や教会などで炊き出しが行われるのが恒例行事となっています。
今では王族も誕生日のプレゼントは穀物で貰い、民に還元しているわ。
妹と両親には迷惑ばかりかけられましたが、そのお陰で貧しい民が飢えずに済むようになりました。
災い転じて福となすですね、妹と両親には感謝しないといけません。
――終わり――
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