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冬童話2021 『さがしもの』

なに買うんだったっけ?

作者: 小畠愛子

 お使いを頼まれたまほちゃん。ママにもらったお使いメモを見ながら、スーパーに買い物に行きます。


「えーっと、鶏肉300グラム、ジャガイモ一パック、玉ねぎは、三個入りがあったらそれを買って……。それと、カレーのルーだわ!」


 まほちゃんはメモをじっくり見ていきます。


「それに、あ、ママったら、にんじんもカレーに入れる気だわ。にんじんきらいっていってるのに……。それに、あれ、どうしてマッシュルームも?」


 まほちゃんのまん丸くて大きな目が、ぱちくりしました。おともだちの福子ちゃんの家では、マッシュルームをカレーに入れると聞いたことがあります。でも、まほちゃんの家ではマッシュルーム入りのカレーは食べたことがありません。


「ママ、どうしたのかなぁ? あ、もしかして、新しいメニューの開発かなぁ?」


 まほちゃんのママは、いろんな料理にチャレンジするのが好きなのでした。たまに失敗することもあるのですが、それでもまほちゃんはママの料理が大好きでした。


「マッシュルームカレーに挑戦するのかなぁ? あれ、でも……」


 まほちゃんは、メモの続きを読んで、またしても目を大きくまたたかせました。


「ブロッコリー……? えっ、どうして?」


 さすがのまほちゃんも、カレーにブロッコリーなんて入っているのは見たことがありません。なによりまほちゃんは、ブロッコリーが大の苦手なのでした。


「せっかくのカレーなのに、ブロッコリーなんていやだよぉ……」


 泣きそうな顔になるまほちゃんに、うしろから声がかけられました。


「あっ、まほちゃん! お買い物?」

「あっ、福子ちゃん! うん。福子ちゃんは?」


 うしろには、まほちゃんのおともだちの福子ちゃんがいたのです。


「あたしはこれから、みんなと公園で遊ぶんだ! まほちゃんも行かない?」

「あ、どうしようかなぁ……」


 あんまり遅くなると、ママが心配するかもしれません。でも、少しぐらいならママも気にしないでしょう。なにより福子ちゃんたちは、いつも面白い遊びを思いつくのです。まほちゃんは買い物のメモと福子ちゃんを見くらべて、それからこっくりうなずきました。


「わかった、いっしょに遊ぼう!」


 まほちゃんの言葉に、福子ちゃんもにっこり笑いました。




「面白かったなぁ、なわとびしながらだるまさんがころんだするなんて、あんなのよく思いつくよ、福子ちゃん。でも、ちょっと遊びすぎちゃったかも。早く帰らないと……」


 お家へ帰ろうとするまほちゃんは、ハッとしてから、スカートのポケットを探しました。


「あれ、ない、ない……。ママのお買い物メモ、どこ行っちゃったの?」


 どうやら遊んでいる間になくしてしまったのでしょうか。まほちゃんの顔が青くなります。


「どうしよう、いったん帰って、ママにもう一度聞こうかしら。でも、お買い物せず帰ったら、遊んでたこと怒られちゃう……」


 いつもは優しいママですが、起こるととっても怖いことを思い出し、まほちゃんはぶるぶるとふるえました。


「こうなったら、思い出さなくっちゃ。確か今日はカレーを作るんだったわ。カレーは、じゃがいも、玉ねぎ、それにわたしはきらいだけど、にんじんもいれるはず。それに、わたしは豚肉のカレーが一番好きだから、きっと豚肉が入っているはずだわ。……でも、なんか変な材料も書いてあったんだよね。それを見て、ママがまた新しいメニューにチャレンジするんだって思ったもん」


 まほちゃんはメモに書かれていた材料を、なんとかして思い出そうとします。そのうちにまほちゃんは、あっと小さく声をあげたのです。


「そうだ、マッシュルームだわ! 福子ちゃんのおうちでごちそうになった、マッシュルーム入りのカレーを、ママは作ろうと思ってたんだわ! それじゃあさっそく買って帰ろう!」


 まほちゃんはホッとした様子で、スーパーへ向かいました。




「玉ねぎ、じゃがいも、うーん……でも、買わないと怒られちゃうから……にんじん。それに、マッシュルームも。野菜はこれで終わりだよ……あっ!」


 買い物かごに野菜を入れていくうちに、まほちゃんはある野菜に目がとまりました。


「ブロッコリー……?」


 まほちゃんの顔がうぅっとゆがみました。


「そういえば、ママのメモ、ブロッコリーって書いてあった。ママ、マッシュルーム入りのカレーじゃなくて、ブロッコリーも入ったカレーを作ろうと思ってたのかな? でも、ブロッコリーなんて、どう考えても合わないよ。マッシュルームに、ブロッコリー……。だってこれって、カレーじゃないもん。カレーじゃなくてどう考えても、シチュー……あっ!」


 またしてもまほちゃんは声をあげました。そばでトマトを買おうとしていたおばさんが、思わずまほちゃんをふりかえりました。


「そうだ、これってシチューの材料だわ。……でも待って、それならわたし、豚肉だと思ってたけど、そうじゃなくて鶏肉だわ! シチューといえば鶏肉だもん!」


 納得したように何度もうなずき、まほちゃんの顔がほころびました。


「それじゃあさっそく買っていこう!」


 買い物かごをぎゅっと握って、まほちゃんはブロッコリーをかごに入れました。




「ただいまぁ!」

「お帰りなさい。まほちゃん、遅かったわね」

「ごめんね、ママ。途中で福子ちゃんたちと会って、遊んじゃったの」


 えへへと笑うまほを、ママは仕方がないわねぇといった表情で見ていました。まほはママに買い物ぶくろを渡します。


「ママ、シチューの材料買ってきたよ」

「えっ、シチュー? あら、わたしカレーの材料をメモしてなかったかしら?」


 ママが首をかしげました。まほちゃんはえへへと笑って首をふります。


「ママったら、あれ、シチューの材料でしょ? ブロッコリーにマッシュルームって。だからわたし、カレーのルーじゃなくて、シチューのルーを買ってきたんだ。でも、にんじんもブロッコリーも入れないでほしいわ」

「ブロッコリーに、マッシュルーム? あ、そうか。ごめんねまほちゃん。ママ、チキンカレーを作ろうと思ってたんだけど、そっか、シチューの材料を書いちゃってたのね」


 ママの言葉に、まほちゃんは目をぱちくりさせました。


「えっ、じゃあ、カレーのルーが間違ってたんじゃなくて……」

「そうよ、マッシュルームとブロッコリーが間違っていたのよ。ごめんなさいね。……でも、せっかくまほちゃんが買ってきてくれたんだし、今日はシチューにしましょうか」

「やったぁ!」

「でも、にんじんもブロッコリーも入れるからね」


 ママにいわれて、まほちゃんはうぅっと顔をしかめました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] メモを紛失しても、何とか思い出しながら買い物するまほちゃん、頑張りましたね。 また、人参とブロッコリーが苦手な所が、子供らしくて可愛いです。 [一言] 調べてみた所、チキンカレーやキーマカ…
[良い点] まほちゃん、頑張りましたね! [一言] こんばんは。レビューから拝読しました^^ 我が家ではブロッコリーやキノコ入りのカレースープを作るので、途中までそれかと思っていました(笑)。 …
[一言] まほちゃん、メモを失くしても何を買うのだったか考えながらお買い物できて偉かったですね。 でも、今度からは、お買い物を済ませて一度おうちに帰ってから遊びに行きましょうね。 あんまり帰りが遅いと…
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