第1話 エメラルダ・クオンティズ
エメラルダ・クオンティズは外れくじを引いてしまう人物だ。
誰もが欲しがらない残り物を手にして喜ぶような、そんな変わった女性。
そんなエメラルダには、多くの友がいた。
彼女の優しさに惹かれて集まったその者達は、いつでもエメラルダを助けようと考えていたのだった。
珍しい緑色の髪に透き通った翡翠の瞳。
エメラルダ・クオンティズは珍しい容姿をしていた。
普通に生きていれば、ありえない容姿をしているため、人々から魔女だの悪魔だの噂される事がある。
だが、彼女と触れ合った事がある者は、それがまったくの誤解であると知っているだろう。
道で倒れていた者には水を恵み、困っている人に寄り添って一緒に悩める、そんな女性であると。
エメラルダは、性格が災いして国を追放された身だ。
王子の婚約者だった彼女は、やってもいない罪で血の涙もない悪役令嬢となじられ、断罪されてしまった。
しかもそれを彼女が想いを寄せていた人物、王子当人から。
「エメラルダ。もうお前の顔など見たくない。この国から出ていけ!」
王子は今頃、主人公であるどこかの国の姫と婚約して、幸せによろしくやっているらしい。
しかし、エメラルダがたどり着いた国は、彼女を優しく迎え入れた。
そして、名誉市民として出迎えられる事になった。
それは、彼女が以前助けた旅人の音が、めぐりめぐって色々な人を助け、王女の目にとまったからだ。
エメラルダは、王女に認められて、優しい国で第二の人生を歩んでいた。
元貴族で名家のお嬢様であったエメラルダ。
この国の市民を助けた事で名誉市民となり、ほんの少しだけ有名になった彼女は、最初に雇われた場所である宿屋にいる。
どんなに偉くなっても、その店の手伝いをしているままだった。
当初は、慣れない仕事に苦難していたが、今では数か月かけて立派な従業員に成長していた。
毎日する事といったら、旅人が訪れる宿の部屋を整え、宿泊の記録をとるだけ。
エメラルダはそんな日々に満足していた。
彼女は、無欲な少女であった。
ところが、そんな働き者のエメラルダを、心の底から労いたいと思っている者達が大勢存在していた。




