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7、お友達


「今日はいつもよりも種類が多いですの。気に入ってくると良いのだけど……」



 そう言いながらニコニコと迫るのは、つい先日友達と言ってくれたレナリ様。

 私、エーデル・アトワイルはあの日をきっかけにレナリ様によく呼ばれるようになった。父様と共に屋敷に帰ったその日に、彼女からの手紙が届いた。


 宛名を見て、震える体を抑えるのに必死だった。


 レファールが「大丈夫?」と言いながら手紙を取ったのもだしレオグルがすぐに自室へと運んだのも早かった。気付いたら、あっという間に用意されている紅茶とクッキー。

 動揺を抑える為にと、暖かい内に紅茶を飲み砂糖とミルクを加えてミルクティーを作ってほっとする。


 そうしている間にも、レファールも普通に入って来て「へぇ、王女様に呼ばれたんだ」と手紙の内容を見て嬉しそうにしていた。



「良かったじゃん、姉さん。外交で忙しくしている王族からのお誘いを受けるなんて♪」

「い、良いのかな……」

「どういう経緯で仲良くなったんです?」



 聞いてくるレオグルに、私は言葉に詰まった。

 それは……今思い出すとなんて恥ずかしい事をしたのだと思う。レナリ様に、自分の好きな人の事を話しなかなか振り向いてくれないと言う事まで話したのだ。

 しかも、経過報告も含めてと言う事でこれからも定期的に呼びたいのだといった。


 まさか、レオグルの事が話題になっているとは言えず少し考えを巡らす。



「それじゃあ、姉さんは薔薇園を見たの? 結界の役割をしているし、魔力を溜められる性質だから綺麗だったんじゃない。僕、父様から聞いて気になってたんだよねぇ」



 僕も見たいなーと言うレファールをそっと見る。

 彼は私にしか分からないように、ウィンクをしている。……これは、話せない事を察しての話題の乗り換えか。

 でも、薔薇園を見たのは事実なので連れて行ってくれた事と兄さんとの事も話した。



「そう、ですか。……アレス様は、ここでも向こうでも変わらないんですね」



 詳細を聞いたレオグルは困ったように言う。

 レファールは「うわー、変わらないなぁ」と呆れつつもちょっと嬉しそうにしていた。やっぱり実際会わないのもあって、寂しいんだと思い今度一緒に行こうと誘った。



「え、いいの……かな」

「レナリ様から誘われた時に一緒に行きましょう? その過程で、兄さんに会うのだって別に構わないと思うのだけど」



 レナリ様も、ラーバル様も優しい人だ。

 兄さんのあの態度を見てもかなり寛大だし、何故だか私も自由に出入りして良いのだという。兄さんに会う口実でと言われ、兄さんも凄く嬉しそうだった事を思い出す。



『ならラーバルが居ない時な!!』

『え、酷くない!? 私だってエーデルと話したいのに』

『誰がお前なんかと話すかよ!!!』

『その言い方も十分に酷いよーー!!!』



 波長が合うからか凄く仲が良い。幼馴染だったと言われても違和感がない。素直にそう言うと、嬉しそうにするラーバル様と違い兄さんは、かなり困った顔をした。



『冗談じゃない。変な事を言うな』



 止めろよ、と本気で言っている兄さん。

 そんなこんなで、気付いたら私はレナリ様と定期的に会っている。あと、レファールもちょくちょく来ては兄さんの所に遊びに行っている。……ホント、寛大すぎる。



「あれからどうなんです?」



 チラッとレオグルの方を見て、私へと問いかけるレナリ様。

 私が城に行く条件として、レオグルを連れて来るようにと手紙に書いてあった。小さく書いてあったが、レファールにはバレているだろう。

 ぐっと押し黙る私を見て、レナリ様は密かにため息を吐いた。



「その様子ですと、進展はないようですね……」

「す、すみません」

「彼から話しかけて来ることはあるんですか?」



 仕事として話しかけて来る事はあっても、レファールのように砕けた言い方はない。

 レオグルがしている事……。何だろうか???



「趣味や好きな事とかも、分からないのですか?」

「……わから、ないです。逆に私の事は分かっているかも」

「まぁ、執事ですから把握するのは当たり前ですが……借りにも恋人なのでしょう? 把握しなくてどう進展があるんです」



 うぅ、正論過ぎて何も言えない。

 王城から出されるお菓子の味も分からない……。美味しい筈なのに全然、分からない。



「あのー。あんまり姉さんの事、イジメないで下さい」

「レファール」



 レナリ様に反論したのは弟のレファールだ。ちょっとだけむすっとしながら、パクンとクッキーを食べてる。弟の事は事前に知っていたのだろう。レナリ様が「あ、君が」と納得した様子。だけど、2人のやり取りをみながら初めて会った感じがしないのは何故だろうか。



「もうお兄様とのお話は終わったんですか?」

「お陰様で。兄さんと色々と話したので、平気ですね。あとラーバル様から手紙を預かりました」

「そう。受け取るわ」



 そう言ってレファールが受け取った手紙を見て、すぐに燃やした。驚いた私は思わずガタッと立ってしまいその音に、レオグルがさっと駆け寄って来た。



「なにか、ご不自由な事でも?」

「い、いえ……大丈夫。大丈夫よ」

「?……分かりました。何かあればすぐに言って下さい」



 そう言って少しすぐに下ってもらった。お、驚いて変な風に受け取られたかな。

 恥ずかしい思いをし、再び座ると何故だか笑っている気配を感じた。レナリ様と弟だ。



「……ごめんなさい。お、驚いて」

「ふふっ、気にしないで」

「うんうん。別に僕達は気にしてないし、姉さんはそれで良いしね」



 この時、私は全然気づかなかった。

 レナリ様とレファールが妙に仲が良く、2人して楽しんでいるような様子。そして、気配無く近付いた弟に対してレナリ様が何も言わなかった事を……。

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